自らゴジラを熱演『ゴジラVSメガロ』上西監督が込めたアツすぎるVSシリーズ愛
『シン・ゴジラ』でゴジラのモデリングとコンポジター(合成の仕上げ)というVFXの要のパートを担当した上西監督。庵野秀明監督や樋口監督との仕事は、それまでの認識を変える出来事だった。「CGの技術屋として、ずっとお手本にしてきたのはハリウッド映画だったんです。でも『シン・ゴジラ』のお仕事の中で感じたのは、向かうべきゴールがハリウッド以外にあってもいいんじゃないかという価値観。すごく勉強になりました」とふり返る。具体的なコンセプトの部分で影響を受けた作品には『シン・ウルトラマン』(2022)をあげた。「ウルトラマンは、庵野監督が見た当時の記憶を美化して映像化している部分があるんです。自分も小学生の時に見たゴジラを昇華させることを心がけました」。この作品ではモデリングのほかCGスーパーバイザーも担当し、アングル決定までの試行錯誤に関われたことも演出面で勉強になったそうだ。
いっぽう『ゴジラ-1.0』ではモデリングで腕をふるった上西監督。同じ白組所属で接する機会もある山崎貴監督からはVFXの仕事術を学んだと語る。「山崎さんはゴジラのラフデザインのほか、大戸島の樹木など自らCG作りもしています。僕の仕事場は山崎さんの調布スタジオではなく三軒茶屋のスタジオですが、何度も一緒にお仕事をする中で効率的なVFX作りを勉強させていただきました」
いよいよ映画館で上映される『ゴジラVSメガロ』。本作のゴジラの表面は、着ぐるみに使われるフォームラバーの質感が再現されている。そんなゴジラのディテールが味わえるのはスクリーンならでは。「意識して着ぐるみっぽさを取り入れました。『シン・ゴジラ』で培った感覚を活かしたかったのと、生物的リアリティを追求したハリウッド版と被っても面白くないという思いもありました」とこだわりを語る。メガロにはまた、別の意匠も込められている。「メガロの目は複眼ですが、VSシリーズの怪獣の要素を入れたくてバトラのような細かい線を入れました。デザイン以外にも、メガロの鳴き声にバトラの音源をミックスしています。そもそもバトラの造形はメガロの流れを汲んでいるので、逆輸入という感じですね(笑)」 本作をもって2本のショートムービーを完成させた上西監督。これから、どんなゴジラ映画に期待するのか。「ハリウッド版もVSでシリーズ化していますが、向こうはエンターテイメントに振り切った作り。もっとシリアスに寄せた路線で戦う硬派なゴジラが見たいですし、そんなゴジラ映画を自分で作れたら嬉しいです」