自らゴジラを熱演『ゴジラVSメガロ』上西監督が込めたアツすぎるVSシリーズ愛
1987年生まれの上西監督がゴジラと出会ったのは物心がつく前だった。「最初は3歳くらいの頃で、父親が買ってくれたソフビのゴジラにすごく反応したらしいです(笑)。意識したのは小学生の時で、ちょうどVSシリーズ(平成ゴジラ)が毎年公開されていた直撃世代なんですよ」と上西監督。出てきたら必ず勝つ、圧倒的な強さこそゴジラの魅力だと力説する。『GODZILLA ゴジラ』(2014)以降のハリウッド版もお気に入り。「2014年のゴジラが咆哮する姿がすごく好きで、何回も劇場に足を運びました『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)から背びれが初代ゴジラに似た形に変更され、そこもお気に入りです」 当然のように上西ゴジラはVSシリーズの流れを汲んでいる。「ゴジラでいちばんこだわったのは顔つきですね。大好きな『ゴジラVSビオランテ』(1989)と『ゴジラVSキングギドラ』(1991)のデザインのいいとこ取りをしようと頑張りました」。造形だけでなく動きにもこだわりは反映された。「ゴジラの手の向きと動きは、VSシリーズでスーツアクターをされていた薩摩剣八郎さんの演技を踏襲しました。手のひらは前を向き、つねに前に出ていく“ゴジラ拳法”といわれる動きです」。いっぽう戦い方でこだわったのは原典『ゴジラ対メガロ』だった。「当時はプロレス人気が高かったそうなので、怪獣バトルにプロレス技がたくさん使われています。メガロをやるなら入れないとダメだろうと、ゴジラにドロップキックをさせました(笑)」
アクション満載の本作だが、ゴジラとメガロにはモーションキャプチャが使われた。「前作の『ゴジラVSガイガンレクス』もそうでしたが、バーチャル・ユーチューバーが使っているVR機器を使ったシンプルなモーキャプを導入しました」と説明する上西監督は、自らゴジラとメガロを熱演した。「1人2役なので、ひとりで殴って殴られる感じ(笑)。自分で動いてアクションを付けるので、絵コンテも作らず台本に文字でコンテを切ってすませました」。メガロを前作のガイガンレクスと差別化させるため、何度も動きを試しながらモーキャプに臨んだそうだ。 何気ない日常に突然、怪獣という異物が出現する。その光景は『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』(1999)に代表される平成ガメラシリーズをも彷彿とさせる。「やっぱりガメラも世代ですから。最初は全編を通して人間目線のドキュメンタリー仕立てはどうか、という話もあったんです。最終的にその案は却下しましたが、可能な限りドキュメントタッチにしました」と明かした上西監督は、撮影でもっとも困難だったのがロケだったとふり返る。「街を(CGの)装甲車が走るシーンの撮影など、外ロケは大変でした。ロケ地の許可の申請や人止めなどの交通整理、夏場だったので暑さも堪えました」