斎藤元彦氏も駆使した選挙のSNS戦略が「親子対立」の引き金に…影響受けた高齢親が“過激化”するケースも
■「ユーチューブが老後の楽しみ」 その点、「今回の知事選でテレビより優位に立っていたメディア空間」として鈴木氏が注目するのが、斎藤氏擁護を前面に打ち出した、とある保守系YouTubeチャンネルだ。「兵庫県知事選挙の真実」をテーマにした配信回では、装飾のない会議室が映し出され、ゲストに招かれた「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏が淡々と持論を展開していた。 動画のコメント欄には、 「80代のおばあさんです。新聞辞めました。もうだいぶ以前にです。テレビも辞めたいと思っています。~中略~ 残り少なくなってきた人生、しっかり情報収集に努めて勉強していきますわ」 「私も78歳すぎましたがユーチューブがこんなに面白いとはついつい時間がたってしまいます。老後の楽しみが増えました」 といった高齢者からの好意的なコメントがいくつも寄せられていた。 まだまだ好奇心旺盛だが、情報過多なテレビ番組を見たり、文字びっしりの新聞や本を読んだりする知的体力は残っていない……。そんな高齢者たちにとって、動画や短いテキストを自分のペースで消費できるSNSは、実は親和性が高いメディアなのだろう。 だが言うまでもなく、ネット上の情報は玉石混交だ。冒頭のXのポストのように、高齢の親がネット上の真偽不明の情報を信じてしまったり、政治的信条の違いによって親子関係に亀裂が生じたりした場合、子ども側はどう対処すべきなのだろうか。
■「ナマポ」と口にした父への後悔 鈴木氏は、父親に対して心を閉ざしたまま、その最期を看取った後悔をもとに、こうアドバイスする。 「親が高齢の場合、ファクトチェックや議論を重ねることで合意に落ち着かせる時間的猶予は残されていないし、そもそも命や財産に危険が及ばない限りは何を信じようと個人の自由です。私は、父が生活保護受給者を侮辱する『ナマポ』という言葉を口にした時、自分の中で彼の存在を悪魔化してしまいました。でも父を失った今強く思うのは、父が子どものころの話や仕事現場でのエピソードなど、もっといろいろな話を聞けばよかったということ。分かりあえない部分に目を向けるより、共有しあえる話題で対話を深めたほうが、お互いにとって救いがあるのではないでしょうか」 今後、選挙でのSNS戦略はより活発化することが予想される。親子間での不幸な“対立”を生まないためにも、老若男女問わず、正しく情報を取捨選択できるメディアリテラシーを鍛えておく必要があるだろう。 (AERA dot.編集部・大谷百合絵)
大谷百合絵