斎藤元彦氏も駆使した選挙のSNS戦略が「親子対立」の引き金に…影響受けた高齢親が“過激化”するケースも
11月17日に行われた兵庫県知事選は、パワハラ疑惑を受けて失職した斎藤元彦前知事が再び県政の長として返り咲く結果となった。斎藤氏の勝因として、SNSを駆使して若者の支持を集めたことが注目されたが、共同通信の出口調査では、60代以下の全年代で斎藤氏がトップの得票を誇る一方、70代以上も約4割が斎藤氏に投票していた。斎藤氏のSNS戦略は高齢者にも響いた可能性が高いが、その結果、年配の親とその子の間で政治的な“対立”が起きるケースもある。『ネット右翼になった父』の著書もある、文筆家の鈴木大介氏に、今や高齢者も直面する「SNSと政治」の問題について見解を聞いた。 【写真】YouTubeによって「目覚め」た高齢者 * * * 「いやー実家、思ってたよりヤバい。父がこんな感じなのは今に始まったことではないけど、今回は老母も完全に斎藤元知事応援団みたいになっており、全て濡れ衣だのあまりに素晴らしい政策を実行していたため抵抗勢力に嵌められただのよくあるやつを一通り聞かされた」 これは知事選当日に投稿され、約4000の“いいね”がついたXのポストだ。投稿主の親は有権者ではないようだが、その反響は大きく、 「しかしそれを諦めるだけで連れ戻す手段がありません。出るのはため息ばかりです」 「俺の父親もこれ!!!!!昨日1時間位母親に斎藤知事の凄さ熱弁してて頭抱えた」 といった共感の声がいくつも寄せられた。 共同通信社が実施した兵庫県知事選の出口調査によると、60代でも元尼崎市長稲村和美氏とほぼ同数が斎藤氏に投票し、80歳以上も約4割が斎藤氏だった。斎藤氏支持に回る高齢の親と、それに批判的な子の間で分断が生まれるというのも、あながちまれなケースではなさそうだ。
■テレビについていけない高齢者 『ネット右翼になった父』の著者である鈴木大介氏は、晩年に“ネトウヨ”化した父親とコミュニケーション不全に陥った経験を持つ。ヘイトスラングを口にするようになった父親は、がんとの闘病の末、2019年に77歳でこの世を去った。 もちろん、今回斎藤氏を支持した高齢者らの思想は、‟ネトウヨ“とは異なる。一方で、鈴木氏自身の亡き父の姿と照らし合わせると、特定の対象に傾倒する理由が見えてくるという。 「斎藤氏シンパの高齢者が増えた要因として、新聞やテレビがいっせいに繰り広げた“斎藤バッシング”があると思います。今の高齢世代には、リベラル層が権力や社会問題を激しく糾弾する姿を見てきたことによる“アンチ左翼”の人が一定数いて、彼らは他者を攻撃する姿勢そのものに嫌悪感を抱く“アンチキャンセルカルチャー”の傾向もある。『1億総斎藤たたき』と言わんばかりのマスコミの姿に、しんどさを感じた高齢者は少なくないはずです」 また高齢者目線に立つと、テレビ番組の「見せ方」にも大きな問題があると鈴木氏は言う。 「音楽やテロップで過剰な演出をしたり、出演者たちが食い気味にトークを展開したりするワイドショーは多いですが、年配の視聴者にとっては疲れるし、話についていけない。若者のテレビ離れは以前から言われていますが、今や高齢者の取り込みにも失敗していると思います」