認知症予防、鍵は「脳のしわ」 金大・河﨑教授らフェレットで確認 仕組み解明、治療法確立へ期待
●しわから脳脊髄液染み込みやすく⇒ 原因の老廃物、効率よく排出 認知症予防の鍵は「脳のしわ」だった。金大医薬保健研究域医学系の河﨑洋志教授(脳神経医学研究分野)らの研究グループは、アルツハイマー病など認知症の原因とされる老廃物を洗い流す脳脊髄液が、しわから脳内によく染み込むことを確認した。世界で初めてこの仕組みが解明されたことで、老廃物除去の効率の低下が発症につながる可能性があることが判明。しわの中で働く遺伝子の活性化など、新たな予防・治療法の確立が期待される。 ●英科学誌に掲載 大脳は、機能を発揮するために多くのエネルギーを消費し、その結果、多くの老廃物を出すという。アルツハイマー病は大脳に老廃物のタンパク質「アミロイドベータ」が蓄積することが原因とされるため、脳脊髄液がそれらをどれだけ効率よく脳内から取り除くことができるかが重要となる。 進化の過程で大脳が大きくなるほど中心部まで脳脊髄液が届きにくく、寿命が長いほど除去しきれなかった老廃物が残って認知症のリスクが上がるのではないか。河﨑教授らのグループはこうした観点で実験を開始。発達した大脳では、老廃物を効率的に「掃除する」仕組みがあると予想し、人間と類似の特徴を持つフェレットの脳で独自の研究を進めた。 脳脊髄液の流れを色素を付けて観察したところ、大脳表面のしわ周辺で浸透率が高いことが分かり、しわには水を通す遺伝子「AQP4」を持つ細胞が多いことが確認された。 グループは、この遺伝子の働きが衰えることで、アルツハイマー病などの認知症が引き起こされている可能性があると指摘。遺伝子を対象にした診断法や治療薬の開発を視野に分析を進める方針だ。 類型がいくつもある認知症のうち、アルツハイマー病に次いで多い「レビー小体型」でも脳脊髄液の働きが発症につながっているかどうか検証するとしている。 河﨑教授は「『レカネマブ』『ドナネマブ』といった認知症新薬と合わせ、研究成果を進行の抑制に生かしたい」と語った。研究成果は4日、英科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ」に掲載された。