中村勘九郎・七之助が語る 亡き父・勘三郎さんから孫に継がれる中村屋の“芝居愛”
■歌舞伎座で十三回忌追善公演を上演
勘三郎さんが亡くなって12年目となる今年。歌舞伎座で公演中の追善公演では、勘三郎さんの襲名披露狂言でも披露された世話物『籠釣瓶花街酔醒』や、勘三郎さんが初演した作品『猿若江戸の初櫓』の“猿若役”で、勘九郎さんの長男・中村勘太郎さん(12)が演じるなど、勘三郎さんに所縁のある演目が上演されています。 ――公演の見どころを教えてください。 勘九郎:特に私と七之助がやらせていただく『籠釣瓶』で演じる“次郎左衛門”は、本当に父が大好きだった役を、初役で勤められて、しかも兄弟2人でできるっていうのは、こんなうれしいことはないです。(七之助さんが)二男の長三郎と共に踊る『連獅子』は、本当に中村屋に所縁のある演目。私たちも父と共に踊ったのは数えきれないぐらい。 七之助:一番踊ってますね。 勘九郎:祖父の十七世・勘三郎が、父(十八世・勘三郎さん)に「お前、追善ができるような役者になっておくれ」って遺言のように言っていたことを、自分たちができたことっていうのは喜んでくれてるんじゃないかなと思います。 七之助:(父は)背中で見せてたっていうところがあるので、父から受け継いだものをまずちゃんとやる。そこを経て、教わったものを伝えていくってことが大切なんじゃないかなと思いますね。
■初舞台から7年 息子・勘太郎と長三郎の成長
父から受け継いだものを今度は息子に伝えていく勘九郎さん。今回の公演では勘太郎さんだけでなく二男の・中村長三郎さん(10)も出演。まさに今、中村屋の伝統を受け継いでいます。 ――勘太郎さんと長三郎さんは、稽古場でどのような様子ですか? 勘九郎:長男の勘太郎は、もう頭の中芝居しかない。小学校の時、学校に面談へ行くじゃないですか。先生に「授業中よく、ぼーっとしていらっしゃることがあるので気をつけてください」って、「すみません」って言って、帰りの車の中で、「お前(授業中に)芝居のこと考えているんだろ?」って聞いたら、「うん」って。授業中、芝居のこと考えているんですよ。 ――それは、お父さんとしては… 七之助:注意できないよね? 勘九郎:そうなの(笑) うれしいですよね。 ――七之助さんは、今回勘太郎さんと共演されますがいかがですか? 七之助:この間、初めて稽古見たんですけれども、僕は叔父バカなので…。もっと成長するでしょうけれど、私の想像をはるかに超えていて、終わったときに抱きついちゃいました。甘やかしてはいけないかもしれませんけれど、ちょっとうれしかったですね。 ――二男・長三郎さんはいかがですか? 勘九郎:彼は普段、ファニーな男です。チャーミングで突拍子もなかったり、不思議だったりする子なんですよ。でも稽古になった途端、何のスイッチか分からないんですけど「はい、お願いいたします」って。(勘九郎さんが)「背中でよく音聞いて」って注意すると「はい!」って。人が変わっちゃうんですよ。 ――小さいころからそうなんですか? 勘九郎:違う違う、今回から 七之助:今回からね。 勘九郎:(勘三郎さんのことを)じじちゃまって呼んでるんですけど、そのじじちゃまの追善で踊るということを彼の中で認識しているんですよね。