「退去時に高額請求」「入居時にあった傷まで…」賃貸の“退去費用”トラブルなぜ? 専門家の見解
4月から始まる新生活に向け、退去シーズンとなる3月。この時期、多くなるのが賃貸住宅の“退去費用”にまつわるトラブルだ。実際、消費者庁が所管する国民生活センターにも「高額の原状回復費用を請求された」「入居時からあった床傷に対する原状回復を求められた」などの相談が多数寄せられている。特に費用に関しては不満の声が多く、今年1月に不動産・住宅サイトの最大手ライフルホームズが賃貸引っ越し経験者1000人に行った調査でも、2人に1人が「退去費用に納得していない」と回答している。その原因とトラブルに合わないための正しい知識について、同社に話を聞いた。 【調査結果】入居者が負担しなくて良い費用、間違えがちな項目とは?
■ポスターを貼った画びょうやピンの穴はOK!? 入居者負担、大家負担の不明瞭さがトラブルの原因に
賃貸物件を退去する際には、多くの場合、「退去費用」が必要となる。入居者の故意や不注意によって賃貸物件に生じた汚れや傷を元の状態に戻す(=「原状回復」)ためにかかる費用のことで「原状回復費用」とも呼ばれる。 「原状回復費は、賃貸契約時の重要説明事項で、必ず説明されています。ただ、原状回復費には入居者が負担するものと、大家さんが負担するものがあり、まずは、この認識合わせができていないと、トラブルの原因につながってしまうと思います」(「LIFULL HOME’S 住まいの窓口」高瀬一輝さん/以下同) 基本的に入居者が負担するのは、故意による過失の修繕費用。そして大家側が負担するのは自然損傷による建物価値の減少分の回復だ。この原状回復の負担区分には国土交通省が定めた国のガイドラインがあるが、2020年の法改正後も、当事者の合意によって変更することができてしまうため、大家、物件ごとに条件が違うことも、トラブルの一因になっている。 「タバコのヤニ汚れによる壁紙の張替え費用などは、多くの借主が納得しているもののひとつです。一方で、エアコンは、メンテナンスしていなくて故障した場合はお客様負担。メンテナンスしていて寿命で壊れた場合は大家負担など分かれていることがあります。これらは契約時に説明を受けるか、契約書類に明記されています」 この時、納得できない“原状回復費”があれば、契約しない、または大家負担になるよう交渉するなどの対策を打てば良いが、入居時に退去に関する契約内容を細かくチェックできている借主は多くないという。また、契約時には認識のすり合わせができていても、入居から年数経ち、退去する頃には忘れているパターンもあり“言った”“言わない”となる場合もあるようだ。 借主が間違えがちな“入居者が負担しなくてもいい費用”の一例も知っておくと役に立つ。大家や物件によって異なる原状回復費の負担区分だが、次に挙げるものは、多くの賃貸物件で大家負担となっているもの。 ・ポスターを貼ったことによる画びょうやピンの穴 ・家具を設置してできた床やカーペットのへこみや跡 ・冷蔵庫設置による壁焼け ・エアコンを設置してできた穴や跡 ・水漏れが発生したエアコンの修理・交換代 上記について原状回復の費用を請求された場合は、入居時の契約書を確認することが大切だ。