関西万博で「新地」は消えるのか!? 信太山・今里・滝井の「大阪穴場新地」を歩いて聞いてみた
これまで国際規模の大きなイベントが開催されるたびに、大きな取り締まりが行われ、いくつもの色街が姿を消してきた。大阪の〝五大新地〟の人々は来春開催される関西万博についてどう感じているのか。風俗ジャーナリストの生駒明氏が現地でナマの声を聞いた。 【これぞ花街の風情…】すごい…今里新地でみつけた情緒ある組合提灯 【前編】「花博で大阪のソープは壊滅」関西万博で大阪の〝新地〟はどうなるのか!? 現地の声を聞いた ◆〝顔バレ〟したくない女性が集まる信太山新地 現場の実情を知るべく、10月初頭に信太山、今里、滝井の3つの〝穴場〟新地に足を運び、大阪・関西万博の開催について、現地の人に話を聞いてみた。 信太山新地は、8500円(15分)という激安価格で、飛田新地や松島新地に匹敵するほどの美女と遊べる色街だ。住所は大阪府和泉市幸1丁目で、JR阪和線・信太山駅の北東400mほどに位置する。〝料亭〟ではなく〝旅館〟という形式で営業しており、40軒ほどが徒歩10分くらいで回れるコンパクトな一角に密集している。 料金は15分ごとに8500円ずつ値が上がるシステムで、最長の60分なら3万4000円となる。営業時間は10時ごろから深夜24時まで。人気がある女性は18時以降や土日の出勤の場合が多く、平日の夜や週末は満室になるほど混雑する。毎月20日は全店休業となる。 入店し1階の券売機でコースを選んでチケットを購入した後、控室で遊びたい女性のタイプを伝える。2階の個室に入りシャワーを浴びてベッドで待っていると女性が部屋に入ってきて、プレイ開始となる流れ。サービス内容は濃いという評判だ。〝顔見せ〟がないことから〝顔バレ〟を避けたい女性が集まっている。女性のレベルが高いので、関西だけでなく、東京や名古屋からはるばる遊びに来る人もいる。 信太山新地に着いたのは午後5時過ぎ。客が5人ほど路上を歩いている。旅館の玄関には客の靴が置いてある。旅館に向かう女性の質は高く、アイドルのような若い女性や、女優のようなお姉さんを目にした。旅館の客引きたちに話を聞いてみた。 ──もうすぐ万博があるけど、ここは休みになったりするんですか? 「大丈夫、大丈夫。総理大臣が来るわけでもないし。サミットとは違うから」 やたらと元気に客を引いているおばちゃんに聞くと、そんな楽観的な答えが返ってきた。 「ここは大丈夫。ちゃんと組合が管理しているから」(別の客引きのおばちゃん) 「よく分からないけど、閉めるんちゃいますか。飛田もそうするかもしれないし。こういうところは」(人の良さそうな客引きの男性) 「万博開催中に外国人の客がいっぱい来るのでは?」と声の大きな客引きのお姉さんに尋ねると、「ここ外国人NGだから、関係あらへん。飛田は外国人OKやけど」とのこと。外国人NGであれば確かに万博でインバウンド客が増えても恩恵を受けることはないだろう。それゆえに取り締まりや休業に対する危機感もほとんどないようであった。 ◆観光地化しておらずゆったりできる今里新地 落ち着いた雰囲気の中でちょんの間遊びをしたい人にとって最適の料亭街が今里新地だ。〝顔見せ〟がないゆえ、飛田新地のように観光地化しておらず、新地全体がゆったりとしている。住所は大阪市生野区新今里3丁目。難波から電車で8分ほどの近鉄今里駅が最寄り駅となり、駅から徒歩10分ほどで辿り着く。現在の料亭の数は9軒で、東西に伸びる2本の街路沿いでひっそり営業している。 料金は30分1万4000円、60分2万8000円。今年8月から値上げとなったが、30分コースは五大新地の中で最安となる。営業開始は昼12時30分ごろからで、終了は昨年12月26日から深夜23時までとなった。なお、毎月第3水曜日は全店一斉休業の日となっている。 店内で好みを伝えると、女性が待機している場所から派遣されてくる。基本的に店による女性の違いはない。以前は20代後半~40代くらいがメインだったが、ここ数年で若い女性が増え、平均年齢は30歳くらいになっている。2階の部屋に入ると飲み物とお菓子類が出される。シャワーがある店の場合は、女性が来る前にシャワーを浴びる。シャワーがない店の場合は、女性が到着してからウェットティッシュできれいに拭いてくれる。全体的にサービスは良質だ。 ここでも「万博にはまったく関心がない」という声が多かった。 「大丈夫、大丈夫(早く遊んでいって)。今なら選べますよ。20~40代までいます。ここは安いんですよ」 そう話す客引きのおばちゃんは笑顔でやたらと「大丈夫」を連発する。まったく心配していないようだ。 別の料亭で、おっとりした感じの客引きのおばちゃんにも話を聞いたが、この店はひっきりなしに玄関の電話が鳴って会話が進まない。 「若い子と遊ぶなら9時までがいいから、そこの店(近くの料亭)で頼みなさい」 この店は常連客で流行っており忙しいようだ。目の前の商売でいっぱいいっぱいで、来年のことなど考えている暇なんてないのかもしれない。直後に店内に入っていった30歳くらいの美人を見て、すぐに納得した。客は中高年ばかりであった。 ◆規模は小さいがサービスでは満足度の高い滝井新地 滝井新地はどうだろうか? ここは大阪の五大新地の中で最も規模が小さく、閑静な住宅街のL字型の路地に9軒の料亭が密集する。住所は大阪府守口市滝井西町2丁目で、最寄り駅の京阪本線・滝井駅から徒歩3分ほどとなる。〝顔見せ〟はあるのだが、基本的に店の外側から女性を見ることはできず、店内に入ってから好みの女性を選ぶ流れとなる。客引きのおばちゃんの合図で1~3人の女性が出てきて、顔合わせをする。 料金は30分1万6000円が基本。以降40分2万円、50分2万4000円、60分2万7000円となる。今年5月に各コース2000円UPとなり、現在の価格に改定された。営業時間は15時ごろから深夜24時まで。店によって開いていない日もあるが、全店が閉まっていることはない。 女性を選ぶと2階の和室に案内される。シャワーが設置されている店もあるが、主に女性が利用するためのものとなっている。女性は風俗・料亭の経験者がほとんど。20代が約20%、30代が50~60%、40代が20~30%ほどで、年齢の割にきれいで若く見えるルックスの〝美魔女〟と呼ぶに相応しい女性が多い。プレイの質が良く、サービス重視なら満足度が高いと評判だ。 ここでも料亭の客引きを中心に話を聞いた。小柄で話し上手な客引きのおばちゃんは、「まだ言われてない。知らん。分からない」とそっけない返事。そんなことにはまったく関心がない様子で、ここでも上がっていくことを熱心に勧められる。 「お兄ちゃん、上がってってや。30分1万6000円。ええ子やで。見てみいや」 玄関の奥を覗いてみると、顔立ちの整った30歳くらいの美人が一人座っている。 「うちで一番若い子や。あの子、あれダメとか、言わん。なんでも許してくれる。サービスがいいんや」 確かにカワイイ。もっと熟女しかいないかと思っていたが、そうでもないようだ。 別の料亭の若い客引きのおばちゃんに万博について聞いてみる。 「大丈夫よ。こっちは守口市だから。飛田と松島は規制があると思うけど」 ──もう決まっているんですか? 「前にもあったもん。サミットのとき」 根掘り葉掘り質問を続けているうちに「上がりに来たのかおしゃべりしに来たのかどっち?」と不機嫌な顔で言われてしまった。 和泉市にある信太山新地もそうだが、「大阪市内」でないと取り締まりの事情なども変わってくるのだろうか。ここも信太山、今里と同様に客の姿はちょくちょくあるものの、飛田新地ほどの熱気はない。客引き曰く「飛田は見るだけの人も来るから」とのことだった。やはり観光地化していないぶん、当事者感は薄いのかもしれない。さらに新地の周囲の一般の人に話を聞いたのだが、関西万博はここでも全然盛り上がっていなかった。 大阪に点在する3つの穴場的な新地と、大阪・関西万博の開催についての各新地のナマの声を紹介してきた。実際に現場を回った感想は、〝万博開催が近づいても、どの新地も動じていない、どっしり構えてビクともしていない〟ということだ。昼夜の取材を通して〝新地の人々は全然万博を気にしていない、意に介していない〟のがよく伝わってきた。万博開催中も五大新地は何の問題もなく営業するだろう。飛田、松島といった規模の大きな新地と同様に、信太山、今里、滝井という小規模な新地も万博開催中は今以上に繁盛するのが予想される。 どの新地も、さまざまな時代を生き延びてきた歴史ある色街である。万博中の繁栄を願ってやまないだけでなく、万博前や終了後も温かい目で見つめ、応援していきたい。 取材・文・写真:生駒明
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