消費者物価3カ月ぶり伸び拡大、予想は下回る-利上げ巡り見極め続く
(ブルームバーグ): 5月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は3カ月ぶりに伸びが拡大した。エネルギーの上昇が全体を押し上げた。一方、伸び率は市場予想を下回った。円安基調の継続などで物価の上振れリスクが警戒される中、追加利上げの時期を巡って市場の思惑が引き続き交錯しそうだ。
総務省の21日の発表によると、コアCPIは前年同月比2.5%上昇した。市場予想は2.6%上昇だった。エネルギーは7.2%上昇と前月から伸びが加速。再生可能エネルギー発電促進賦課金の単価引き上げの影響で電気代が14.7%上昇と1年4カ月ぶりにプラスに転じた。一方、生鮮食品を除く食料は3.2%上昇と9カ月連続で鈍化した。日本銀行の目標の2%を上回るのは26カ月連続。
日銀の金融政策運営を巡っては、根強い円安圧力などを背景に早期の追加利上げ観測がくすぶっている。植田和男総裁は次回7月の決定会合での利上げの可能性について、データ次第では「十分あり得る」として排除していない。賃金上昇のサービス価格への波及など基調的な物価の動向がポイントになるが、今回の結果からは、なお見極めが必要と言えそうだ。
伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストは、コアCPIの伸び拡大は再エネ賦課金を含む政策的な要因による一時的なもので、「コアコアで見ると物価の基調は鈍化方向にある」と指摘。サービス価格が弱く、利上げを急げば「景気回復の芽を摘んでしまうリスクの方が大きい」と述べ、今回の結果は少なくとも7月の利上げの確度を上げるものではないとの見方を示した。
賃金動向を反映しやすいサービス価格は1.6%上昇と、3カ月連続でプラス幅が縮小した。今年の春闘の平均賃上げ率が33年ぶりの高水準となる中で、賃金から物価への転嫁が進展するかが注目されている。総務省は、外食産業では価格改定にあたって人件費の転嫁もみられると説明した。
生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIは2.1%上昇と、9カ月連続で伸びが縮小。市場予想(2.2%上昇)を下回った。