仏像販売、新しい「売り方」で年間1億円超 「たくさん買えば安くする」とは異なる論理 話の肖像画 夢グループ創業者・石田重廣<21>
《新しい「売り方」を覚えた》
なぜ蘇建民は提示価格より高く売ろうとしたのか。「社長、僕はこんないい仏様をやっとの思いで集めてきたんです。いい仏様を欲しいと思う人はいっぱいいます。そこで3体しか集まらなかったとすれば、あのお店が買い占めることになりますよね。だからあの仏様を欲しがっている他の方々のためにも30万円では売れないんです」
僕は「たくさん買ってくれれば安くします」と思っていたのですが、蘇建民は「希少価値のあるものをたくさん買うのであれば、少しは色をつけさせてもらいます」という考えです。そこで僕は新しい売り方を覚えたのね。蘇建民は「これからは1人で商談に行きます。けんかになって、社長に迷惑がかかるから」と。で、年間1億円以上も売り上げるわけです。
その後、蘇建民の要求もあって中国からもう一人、スタッフを呼びました。それがある朝、ストックしていた仏像とそのスタッフとともに蘇建民が消えた。「独立します」と。これにも度肝を抜かれましたが、考えてみれば、蘇建民は終業時刻後も仏像の修理をするなど情熱はすごかった。深夜までヤスリで削ったりね。「捨てればいいじゃないか」と言うと、「仏様には彫師の魂がこもっているんです」と言う。こうしたこともあり、僕は独立を認めました。(聞き手 大野正利)
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