これからの不動産の価値を測る“納得”の「物差し」 単純な損得勘定では測れない! 新しい指標に注目
しかし、このような単純図式化された問いは、実は今となっては本質的ではなく、したがってあまり意味がないかもしれません。 それはなぜでしょうか。こうしたテーマは往々にして「経済合理性」を論じています。要は「損得勘定」です。 もちろん経済合理性は超重要。高く買うより少しでも安く買えた方がいいに決まっています。買ったそばから不動産の価値がダダ下がりしてX年後に無価値あるいはマイナス価値となってしまうより、価値が落ちない、落ちにくい方がいいでしょうし、筆者も日ごろその重要性を説いています。
注意したいのは、こうした「損得勘定を語る前提条件が大きく変わる可能性が高い」ということなのです。一般には論じられていない「古くて新しい指標」がこれから新たに加わり、スタンダードになります。 そこには「自治体経営力」「災害対応力」「省エネ性能」といった聞き慣れたワードがいっそう強調されるほか、「好き」とか「愛着」とか「コミュニティ」といった、一見損得とは対極にあると思えるようなワードが、経済合理的にも非常に大事になる時代がやってくるからです。
■価値を左右する自治体経営力 たとえば「自治体経営力」。 どの自治体も例外なく、住民税や固定資産税をはじめとする税収(歳入)で賄われています。たとえば働き盛りの世代が多く流入する自治体では、税収もおのずと増加します。だからこそ自治体サービスもより充実させることができ、住みよい街が形成されるのです。 一方、若年層の流入がなく、高齢化が進む自治体では、税収も乏しく、高齢者向けのサービスに支出はかさみ、そのままいくとにっちもさっちもいかなくなります。
現時点では大きな差異がないように思える各自治体の経営ですが、団塊世代が一通りこの世からいなくなり、人口減少が進んだころはどうなっているでしょうか? 上下水道や道路・橋・公園といった設備・施設の修繕や更新もままならず、住みにくくなっている未来が容易に想像できるでしょう。 この手の話はある日突然現れるわけではなく、じわりじわりと進行するため事態に気づきにくく、前記事でも触れた「ゆでガエルのワナ」に陥りがちです。ゆっくりと進行する環境変化に慣れてしまい、気づいたころには取り返しのつかない事態に陥っているわけです。