『宙わたる教室』『団地のふたり』と名作を量産するNHKドラマ、最近、より面白くなっているワケ。民放とは異なる強みを解説
月9、日曜劇場など話題の民放ドラマは数あれど、近年、コアなドラマ好きほど注視しているのが、意外にもNHK制作のドラマだ。NHKといえば、”朝ドラ”や大河ドラマが一般的だが、その他、民放ドラマとはまた違う独自の強みを生かした作品を次々と世に送り出している。今回は、そんなNHKドラマの魅力を紐解く。(文・苫とり子)
朝ドラと大河ドラマだけじゃない! 秀作ぞろいのNHK制作ドラマの魅力とは?
今年の秋ドラマは豊作との声が漏れ聞こえてくる。なかでもコアなドラマファンから熱い視線を注がれているのが、NHK制作の作品だ。 エンタメレビューサービス「Filmarks(フィルマークス)」が10月30日に発表した2024年秋ドラマの初回満足度ランキングでは、3位に窪田正孝主演の『宙わたる教室』、8位に安達祐実と青木崇高が夫婦役を演じる『3000万』がランクイン。 秋ドラマの枠からは外れるかもしれないが、今月3日までNHK BSにて放送されていた小泉今日子と小林聡美W主演の『団地のふたり』も高い評価を受けていた。 ここ数年放送されたドラマを振り返ってみても、NHKは二大看板である朝ドラと大河ドラマ以外の枠でも心に残る秀作を世に送り続けている。例えば、次々と挑戦的なテーマを打ち出して話題を呼ぶ「ドラマ10」、通常のドラマより回数が短く内容は濃い「土曜ドラマ」、若年層をターゲットにしたユニークな作品が多い「よるドラ」などがある。 そうした枠から生まれた作品を例に、具体的にどういった点が支持されているのか、NHKドラマの魅力を紹介したい。
社会問題に鋭く切り込む姿勢
第一にNHKは日本の社会課題に鋭く切り込んだ作品が多い印象だ。なかでも話題になったのが、2024年4月クールに“ドラマ10”枠で放送された『燕は戻ってこない』。桐野夏生の小説を原作に、日本でまだ法整備が整っていない「代理出産」をテーマに掲げた。 代理出産に関しては、金銭的対価と引き換えに妊娠や出産にともなう身体的・精神的負担を第三者である女性に課すという点から批判の声も多い。しかし、本作は誰のことも安易に断罪しないフラットな視点をもって代理出産について描き、それと切っても切り離せない女性の貧困や不妊治療の現実を浮かび上がらせることで観る人に自分事として受け止めさせた。 貧困を裏テーマにしたクライムサスペンスは多く、松坂慶子が主演を務めた土曜ドラマ『一橋桐子の犯罪日記』(2022)も身寄りのない独居老人が将来への不安から、衣食住が保証された刑務所に入ることを目標に掲げて“ムショ活”に励む物語だ。 『燕は戻ってこない』は石橋静河演じる主人公が向こう見ずな性格でハラハラさせられることも多かったが、本作の場合、主人公が不器用で愛らしいおばあちゃんゆえにクスッと笑えるコメディになっており、全体的にハートフルな雰囲気が漂っていた。 同じ社会問題を扱っていても作品によってカラーは様々で、エンターテインメントとして優れている点はNHKドラマの最大の強みだ。