87歳の巨匠リドリー・スコットの到達点にして、新たな出発点『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』
映画というのは、歴史の教科書ではない
今作の中で、一部、史実に忠実ではないという批判もあるが、そもそも歴史というものは、事実でないことも多数混合されているため、史実というものは、言ってしまえば存在しない。リドリーはそれを熟知しており、いわゆる史実といわれるものを忠実に描くというよりは、改変したとしても人間ドラマを際立たせた作品が多く、歴史ものが苦手なユーザーでも楽しめる作品に仕上げてくれるのが魅力のひとつだ。簡単に言えば堅苦しくない。 確かに人物の配置や設定が史実とは異なっている部分も多々ある。しかし映画というのは、歴史の教科書ではない。今作にとっての歴史上の人物たちは、あくまで器であり、その時代に生きていた者たちが、何を考え、どう行動しただろうかということを様々なシチュエーションを通して描いているのだ。それによって、より濃度と個性の高い作品になるといえるだろう。 リドリーの作品としては、『グラディエーター』もそうだが、『G.I.ジェーン』(1997)の頃から苦楽を共にするプロダクション・デザイナーのアーサー・マックスによって、物理的な闘いと、駆け引きなどによる精神的な闘いが入り乱れ、常に死への恐怖と緊張感が渦巻く戦場を見事に再現しながら、現代の映像技術だからこその大迫力なバトルシーンを構築し、娯楽作としての側面も強調した。まさに劇場で観るからこそ体感できる作品だ。 【ストーリー】 ローマ帝国が栄華を誇った時代―。平穏な暮らしを送っていたルシアス(ポール・メスカル)は、将軍アカシウス(ペドロ・パスカル)率いるローマ帝国軍の侵攻により愛する妻を殺され、捕虜として拘束されてしまう。すべてを失いアカシウスへの復讐を胸に誓ったルシアスは、謎の奴隷商人・マクリヌス(デンゼル・ワシントン)に買われ、ローマへと赴くことに。そこで剣闘士《グラディエーター》となった彼は、復讐心を胸に、力のみが物を言うコロセウム《円形闘技場》で待ち受ける戦いへと踏み出していく―。 【クレジット】 原題:『Gladiator II』 日本公開日:11月15日(金) 全米公開日:11月22日(金) 監督:リドリー・スコット 脚本:デヴィッド・スカルパ 出演:ポール・メスカル、ペドロ・パスカル、コニー・ニールセン、デンゼル・ワシントン、ジョセフ・クイン、フレッド・ヘッキンジャー、リオル・ラズ、デレク・ジャコビほか 配給:東和ピクチャーズ (C)2024 PARAMOUNT PICTURES.
バフィー吉川