名門復活へ気合のイレブン 東海大甲府、決勝も制し第1代表を狙う
5月8日に行われた令和6年度関東高校サッカー大会山梨予選準決勝で、“タイガー軍団”の東海大甲府が日本航空との我慢比べを制し、2018年以来6度目の関東大会キップを手に入れた。かつては山梨県の私学をリードした名門だけに、イレブンは決勝も制して復興への足掛かりにするつもりだ。 【フォトギャラリー】東海大甲府 vs 日本航空 東海大甲府は韮崎や甲府工といった公立校の厚い壁を突き破り、山梨県の私学として初めて全国高校選手権に出場した名門だ。1984年度の第63回大会と64回大会に連続出場。Jリーグの浦和レッズ、セレッソ大阪で活躍した元日本代表候補のFW大柴健二は卒業生だ。しかし近年は山梨学院高等学校や帝京第三の同じ私立校に押され、スポットライトを浴びることがめっきり少なくなった。 それ故、名門復活に懸けるチームの思いは強く、関東大会出場と県予選制覇は春先に掲げた目標のひとつでもあった。 今大会は3回戦から登場し、初戦は甲府城西に3-0で快勝し、古豪・甲府工との準々決勝も1-0で競り勝った。関東大会出場への最終関門、準決勝で当たる日本航空は容易ならぬ相手だ。どんな戦略を練ってこの大一番に臨んだのか。 大石奨悟監督は「相手は縦に速くてヘディングも強い。ボールを保持する時間を長くし、セットプレーを与えないよう不用意なファウルを避ける戦いを目指しました」と指示して選手を送り出した。 日本航空は主将でCBの加藤諒丈、MF飯野陸登(ともに3年)が大柄で、長身選手の少ない東海大甲府は分が悪い。そこでセットプレーの練習では、相手を見立てた守備を繰り返し行って決戦に備えた。 4月6日の県ユースリーグ1部開幕戦でも、山梨学院BにCKから2失点。この反省もあってセットプレーには十分警戒し、周到な対策を講じてきた。 前半途中から強い風がピッチを舞い始めた。後半の東海大甲府は風下に立たされ、守備はもとよりビルディングアップには手を焼いた。ロビングのボールは風にあおられて使えず、指揮官は意図なく蹴り上げるプレーを自重させ、短いパスを主体に足元でボールを持つことを求めた。 しかし日本航空と同じく、ほとんど決定機を築けないまま後半の40分を終了。延長戦へ突入する。 その前半7分、CB秋山愛翔(3年)が右FKのボールをニアサイドからヘッドでねじ込み決勝点。後半の追加タイムにはFW小尾峻真(3年)の突破からPKを獲得し、これをCB千野輝羅(3年)がきっちり突き刺して決着をつけた。 秋山はチームでは数少ない181センチの長身。決勝ゴールは練習でも試したことのない形だそうだが、「あそこにボールが来ると信じて飛び込みました。高さは持ち味だし、会心の点だったのでものすごくうれしい」と喜びに浸った。「リードした後は、もう守り切ることだけしか考えなかった。今日はいつもより体が軽かった」と言って笑った。 主将のGK田川直樹(3年)のキックは正確そのもので、正規の後半は強風の風下にもかかわらず、プレーキックもパントキックも風に影響されることなく味方に届けた。「キックは自分の武器ですから」と真っ先に主張する。 ここまでの3試合は無失点。最後尾で守りの司令塔役を担う田川は、「堅守の理由ですか? 気持ちの問題です」と答えたので具体的な背景を尋ねると、 「チャレンジ&カバーがしっかりやれているからだと思う。自分がその環境をつくっているんです」と守護神は説明した。 GKにしては173センチと小柄だが、そこはポジショニングと前方に進出する積極性でカバーしているという。 決勝を争う日大明誠には新人大会準々決勝で対戦し、1-2で敗れた。大石監督は「そのリベンジもありますし、ヴァンフォーレ甲府さんのホームスタジアムでできることに感謝しながら戦いたい」と述べた。 前回2018年の関東大会は2位での出場とあり、秋山は「ここまで来たら1位で出て、関東でうちの存在をアピールしたい」と気合十分だ。 田川の気持ちはさらに強く、「今年は全国大会にも出場し、学校からも応援してもらえるサッカー部にしたい。山梨を制し、関東でも優勝して全国大会への弾みにしたい」と強い“タイガー軍団”復興へ身を砕く気概を示した。 (文・写真=河野正)