「映画の面白さはもっと多様であってもいい」映画『ルート29』森井勇佑監督が語る、2本目の監督作品に込めた思いとは?
『こちらあみ子』(2022)で第27回新藤兼人賞金賞はじめ数多くの賞を受賞し、デビュー作にして多くの映画ファンを魅了した森井勇佑監督の最新作『ルート29』が11月8日(金)より公開される。森井監督に、主演を務めた綾瀬はるか、前作に続くコラボレーションとなった大沢一菜について、たっぷりとお話を伺った。(取材・文:山田剛志)
「読んですぐに、映画にできそうだな、と思った」 着想源となった詩集との出会いとファーストシーンについて
―――本作の着想源となった中尾太一さんの詩集「ルート29、解放」(2022)との出会いから教えてください。 「本作の企画者であるリトルモアの孫家邦さんから、『映画にするかどうかあんまり考えんでもええから読んでみ』と言われて、渡されたのがきっかけです。読んだらすぐに『映画にできそうだな』と思って、孫さんにそう伝えました」 ―――孫家邦さんから勧められたのがきっかけだったのですね。 「それから『国道29号線が舞台だから、見てこればいい』と言われ、国道沿いをずーっとウロウロし続けて、プロットを書いていきました。 孫さんは、映画の方向性について最初は何も言っていなかったのですが、電話でお話しをする中で、『ロードムービーにしたらどうか』と提案してくださって。自分の中でも腑に落ちるものがあったので、それからはロードムービーを意識しながら、国道をウロウロして物語を作っていきました」 ―――詩集の話に戻るのですが、詩が表している具体的なイメージを映像化しようという意図もあったのでしょうか? 一読して「映画にできそうだな」と思われた理由を教えていただけますでしょうか。 「具体的なイメージを映像化しよう、という意識はなかったですね。それよりも、中尾さんが詩で表現しようとしていることと、自分が映画で表現したいと意識していることがリンクしているのではないかと思えたことが大きかった。世界に対する向き合い方の部分ですね。詩集の世界観に対するシンパシーが根幹にありました」 ―――映画は最初、綾瀬はるかさん演じる主人公・のり子ではなく、修学旅行生の集団に焦点が当てられ、のり子は彼・彼女らの背景として登場しますね。 「実は、脚本上ではのり子のシーンから始まっているんです。具体的には、のり子の脳を写したレントゲン写真――謎の球体が写っている――の場面から始まって、彼女の内省的な日記の文面をフューチャーするなど、主人公の主観に寄り添った導入部だったんですけど、編集の段階で『修学旅行生のシーンを冒頭に持ってきた方が面白いんじゃないか』っていう話になったんです。 元々、様々なものが蠢いている世界にのり子がポツンといる、という風にしたかったのですが、脚本で十全に表現しきれていなかった部分もあって。(ファーストシーンのアイディアを)編集時に見つけることができて良かったです」