音楽が手術後の鎮痛剤に!?その有益性を研究結果が示唆
新しい研究によると、手術後に音楽を聴くことで、痛みや不安、さらには心拍数さえも大幅に抑えられ、回復を助けることができるという。 〈写真〉音楽が手術後の鎮痛剤に!?その有益性を研究結果が示唆 これまでも研究により、音楽には心を落ち着かせる効果があることが度々示されてきた。これを踏まえ、カリフォルニア・ノースステート大学医学部のエルド・フレッツァ博士と研究チームは、音楽が手術後に役立つかどうかを調査した。研究チームは、手術後すぐに音楽を聴くことが、患者の痛み、不安、心拍数、鎮痛剤の使用にどのような影響を与えるかを調査した35件の研究結果を分析した。各研究には約100人が参加し、その半数は腹部または骨関連の手術後に、さまざまなジャンルの音楽を聴くよう求められた。研究によって、参加者が音楽を聴く期間は異なり、30分から退院までと様々であった。 ■音楽が術後の患者の回復に顕著な影響 すべての研究には、痛みや不安などの患者の治療結果に関するデータ、および心拍数やオピオイド使用量の測定値が含まれていた。研究者の分析によると、ヘッドフォンやスピーカーで音楽を聴くという単純な行為が、術後の患者の回復期間に以下のような顕著な影響をもたらすことが分かった。 ■■痛みの軽減 音楽を聴いた患者は、手術翌日の痛みの軽減が統計的に有意に認められた。痛みの軽減については、2つの確立された測定方法である数値評価スケール(約19%の軽減)と視覚的アナログスケール(約7%の軽減)を用いて測定された。どちらも患者が痛みのレベルを自己評価する形式である。 ■■不安レベルの低下 分析されたすべての研究において、患者が自己申告した不安レベルは3%低下した。不安レベルは、80段階で不安を評価する「状態-特性不安調査票(STAI)」で測定を行った。これは患者が回答する形式の調査である。 ■■オピオイドの使用量の減少 術後1日目に音楽を聴いた患者は、聴かなかった患者と比較して、モルヒネの使用量が半分以下であった。(音楽を聴かなかった患者の平均1.654mgに対し、0.758mg) ■■心拍数の低下 音楽を聴いた患者は、聴かなかった患者と比較して心拍数が低下した(1分間あたり約4.5拍減少)。患者の心拍数を健康的な範囲内に維持することは、酸素と栄養素を全身に円滑に循環させ、特に手術した部位に届けることで回復を促進するため重要だと著者は述べている。また、心拍数が100を超える頻脈は、心房細動などの不整脈を引き起こす可能性があり、生命を脅かす危険性もある。 ■音楽は誰もが取り入れやすい方法 「患者は手術後に目を覚ますと、時にはとても不安になり、自分がどこにいるのかも分からなくなることがあります。音楽は、目覚めた状態から通常の状態に戻るまでの移行をスムーズにするのに役立ち、その移行に伴うストレスを軽減する可能性もあります。」と、フレッツァ博士は語る。また、瞑想など集中力を必要とする積極的な療法とは異なり、音楽を聴くことはより受動的な体験であり、手術後すぐに、患者がほとんど費用や労力をかけずに取り入れることができると述べている。「痛みが軽減していると明確に断言することはできませんが、研究により、患者が痛みが軽減していると感じていることが明らかになりました。そしてそれは重要なことです。」と、この研究の筆頭著者であり、カリフォルニア・ノースステート大学医学部の3年生であるシェザイブ・レイス氏は述べている。研究者は、音楽を聴くことによるコルチゾール値の低下が、患者の術後の回復を促進する役割を果たしている可能性があると述べている。今回の分析では、患者が音楽を聴く時間の長さなど、制御できない要素もあった。今後の研究では、手術室や集中治療室での音楽の使用を検証するプログラムが検討予定である。 ■フレッツァ博士のアドバイスは? 「手術後に元気があれば、好きな音楽を聴くことです。音楽は人を慰め、慣れ親しんだ場所にいるような気分にさせてくれるので、手術後の人々をさまざまな形で助けることができると考えています。」と博士は語る。 出典: Listening to Music May Speed Up Recovery from Surgery|ACS Listening to music after surgery seems to be an effective painkiller|NewScientist Listening to Music After Surgery Lowers Pain and Anxiety|Neuroscience 文/HIDEMI
HIDEMI