現代の男らしさを考える「ロエベ」 情報過多の時代が生んだスタイルの“コラージュ”【2024-25年秋冬メンズコレまとめ】
情報にあふれる時代を生きる多様な男性像
象徴的なのは、オックスフォードシャツとカーディガン、レザーパンツ、トレンチコートが一つになったルック。ほかにも、ジャケットとパンツ、パンツとソックス、ソックスとスニーカーといったように一体化したアイテムが着こなしを“強要”する。脱ぎ散らかした色とりどりの服を中に縫い付けたコートや、フーディが腹巻きのようにウエストに溜まったレザーパンツは、寝坊して急いで出かける男子のイメージ。締め忘れたかのようにベルトのパーツが垂れるレザーパンツやジーンズもある。
また、丸みのあるシルエットを描く極太のカーゴパンツ、ブルジョア風の太いボウタイを結んだパイソンやシアリングのショートコートやデニムシャツ、裾に向かって柄が小さくなるチェックシャツやケーブルニット、ライン入りの白ソックスを引き伸ばしたタイツ、カシミアとシルクをシアリングのように仕上げたジャケットといったひねりの効いたアイテムを、レトロスポーティーなトラックパンツやスケーターシューズ、素朴な雰囲気のスキーニット、ぜいたくな素材のコート、かっちりしたスーツとミックス。そこには、情報にあふれる時代を生きる多様な男性像が反映されている。
また、前述のホーキンスの作品は会場演出やインビテーションに用いられただけでなく、ウエアやアクセサリーにも反映された。フーディやジョガーパンツ、アイコンバッグの“スクイーズ”には繊細なビーズ刺しゅうで、“パズルトート”には刺しゅうやレザーのマルケトリー(象がん)で作品を再現。フロアレングスのガウンやドレスのようなニットは、1500時間をかけて手編みで作られたものだという。そのほか、プリントや色使い、リングやチャームなどのアクセサリーにも、その世界観が垣間見える。
ザッピングするように次々と変わる音楽
異なる要素を組み合わせるコラージュというアイデアやさまざまな男性像の反映は、ショー音楽でも顕著だ。用いられたのは、全部で14曲。テレビをザッピングするかのように、ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)の「ゴースト(Ghost)」やボン ジョヴィ(Bon Jovi)の「ウォンテッド・デッド・オア・アライブ(Wanted Dear Or Alive)」、ニルヴァーナ(Nirvana)がカバーしたデヴィッド・ボウイ(David Bowie)の「世界を売った男(The Man Who Sold The World)」から、ザ・クラッシュ(The Clash)の「The Magnificent 7」のパンククラブミックス、クラブ 69の「テイク・ア・ライド(Take A Ride)」のディスコミックス、さらに映画「荒野の用心棒」や「荒野の7人」のテーマ曲まで、時代もジャンルも違う曲が次々に流れた。