避難者8割が車で移動 富山県が能登半島地震発生時の行動アンケート・人流分析
富山県は30日、能登半島地震発生時の県民の避難状況を探るアンケートの結果を発表した。回答者1708人のうち半数が何らかの避難行動を取り、他の場所に移動したうち8割弱が車を使った。人流データの分析も公表し、県内10路線で渋滞が起き、指定避難所ではない場所に逃げた人が目立った。地震時は指定避難所に徒歩で避難することが推奨されているが、実際は反対の事態が起きたことがあらためて示された。 県防災危機管理センターで開いた地震対応検証会議で県側が説明した。アンケートによると、本来避難すべきだったのに避難しなかった人は2割弱。「今いる場所が安全」や「自宅に被害がなさそう」が主な理由として挙がった。一方、津波ハザードマップで避難対象地域になっていない場所にいた人のうち、約3割が津波を理由に避難した。 避難者のうち、地震が起きて5分以内に動き始めた人は2割で、10分以内は3割。ただ4分の1以上の人は「命を守るためどのように行動すべきか分からなかった」とした。地震前にハザードマップを見ていた人は約6割にとどまり、地震後も見なかった人が2割強に上ったことから、県は防災教室などでマップの周知に力を入れる。
人流データは、携帯電話のGPS(衛星利用測位システム)の情報などを分析した。エリア別に地震発生以降の人の密度の変化をみると、富山市では沿岸から5キロ以上離れたエリアでも、南へ向かう人が目立った。沿岸部の市では、津波指定緊急避難所ではなく、学校や運動場、病院などに人が集まった。発生1時間後でも海岸近くにとどまっている人が多数いた。 渋滞は富山市北部の県道30号や県道172号、射水市の国道472号、高岡市の国道415号、黒部市の県道364号など10路線で確認された。砺波市と立山、上市両町の避難所では、市町外から身を寄せた人の利用が過半数を超えた。 有識者からは「車での避難を前提に、駐車場の確保などを進めるべきだ」との意見があった一方、「県内の断層が動いた場合は道路や信号などがより深刻な被害を受けるため、今回と同様に車で避難できるとは限らない」との声もあった。座長の室崎益輝神戸大名誉教授は「貴重なデータを生かし、避難の在り方を横断的に考えるチームをつくってはどうか」と述べた。
この日は避難行動や避難所開設と運営など計4項目を検証した。県が示した14項目の検証はこれで一巡し、10月の次回会合で委員らの意見を取りまとめる。