退職金2,000万円、年金月14万円…60代でリタイア→「引きこもり生活」が引き金に!? 恐るべき認知症リスク
リタイア後、60代の引きこもりで「認知症」リスク上昇へ
上記のような引きこもり増加の背景がある一方、定年退職者の一部が「引きこもり化」する傾向もあるようだ。 近年では、60歳で定年を迎えた際、およそ3割は現役を引退するが、7割は嘱託や非正規等に雇用形態を変更し、就労を継続する。65歳で公的年金をもらえるようになるのを機に現役を引退する。 上述のように、各年齢において同程度の引きこもりが出現しているとした場合、60代で家から出なくなってしまった人たちはおよそ3万人、近所のコンビニくらいにしか行かなくなった人たちは26万人ほどいると考えられる。年金をもらう65~69歳に限定すると、家からまったくでない引きこもりが1.5万人、近くのコンビニには出かける引きこもりが13.2万人。合計で15万人が、いわゆる「引きこもり状態」にあると考えられる。 40~69歳の人たちに引きこもり状態となった年齢を尋ねたところ、最多は「60~64歳」で21.8%、次が「65~69歳」で15.4%。さらに、引きこもり状態になった主な理由として最も多かったのが「退職をしたこと」で37.3%。年齢別にみていくと「60~64歳」では38.6%、「65~69歳」では52.1%。つまり、現役引退はが引きこもりのきっかけとなる可能性が高い。 厚生労働省の調査では、定年退職時の月収は平均51万円で、退職金は平均2,000万円。また65歳から受け取れる年金は、国民年金と厚生年金を合わせて、平均月14万円程度だ。定年退職後にいろいろな夢を思い描いても、実際には退職を機に引きこもりになってしまう人も多いのだ。 しかし、年齢が上がれば認知症リスクもそれに伴って上がっていく。厚生労働省によると、日本における65歳以上の認知症の方の数は約600万人と推計され、2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)が認知症になると予測されている(国立精神・神経医療研究センター 「心の情報サイト」 より)。 一方、横浜町田関節脊椎病院の整形外科医の歌島大輔医師によると、「2004年の研究ですが、日頃よく歩く人は認知機能テストの成績がよく、とくに1週間に90分以上(1日あたりにすると15分程度)歩く人は、週に40分未満の方より認知機能がいいという結果が報告されています」※と説明する。 ※ Jennifer Weuve et al. JAMA. 2004 Sep 22;292(12):1454-61. Physical activity, including walking, and cognitive function in older women つまり、運動しない人は運動する人より認知機能が悪い傾向があるということだ。 定年後退職後、テレビやインターネット三昧の生活を送っているシニアも多いと思われるが、仕事人間だった人ほど、仕事以外のつながりがなく、社会から急激に切り離されてしまう人もいる。引きこもりとなり、認知症リスクを抱えるより、「働けるうちは働く」ことが、経済面からも身体面からも、有力な選択肢であるといえるのではないか。
THE GOLD ONLINE編集部