園児バス置き去り死亡事件で女児の母「何をしても大切な千奈は戻ってこない」 父は「強烈な怒りと恨み」【静岡発】
安心して預けたはずの園で…
千奈ちゃんが川崎幼稚園に通い始めたのは事件の半年前。母親は「園を信頼して子供を預け、いつものようにバスに乗り登園させた」と話す。それ故に「元園長は、なぜ安全に対する意識を持って業務を行わなかったのか?元クラス担任は、なぜ千奈がいない違和感に気付いていながら行動に移さなかったのか?」と疑問を呈し、「両被告が、なぜ千奈の生きる権利を奪ったのか理解に苦しむ」と述べた。 また、「元園長は裁判の中で廃園について問われた際に『今でも信頼して通っている保護者がいるから』と発言した。私たち遺族がいる前で言うことではない。元園長は『遺族に少しでも寄り添っていきたい』と言葉ではいうものの、その言葉選びの配慮の無さ、当事者としての意識の低さ、数々の不誠実な対応に私たちは深く傷つき、怒りと憎しみの気持ちでいっぱい」と失望感をあらわにし、事件からの1年9カ月については「涙を流さない日はない。1日1分1秒も千奈のことを考えない時はない」という。 ただ、「千奈と過ごした時間が過去になり、思い出も増えることがなく、記憶が少しずつ薄れていくのではないか」と自らが感じている怖さも明らかに。 そして、最後に「たった3年11カ月しか生きることができなくて、生きさせてあげられなくて、ごめんなさい。親として我が子を失うことほどつらく残酷なことはない。この先もずっと助けてあげられなかったことを一生後悔しながら苦しんでいく」と千奈ちゃんへの思いを口にすると、「もう何をしても私たちの大切な千奈は戻ってこない。実刑を望む」と結び意見陳述を終えた。
両被告は「反省していない」と指摘
一方、千奈ちゃんの父親もまた、「元クラス担任は『つき組』(千奈ちゃんのクラス)で無断欠席をする保護者と園児はいなかったと話していた。つまり、欠席や遅刻の連絡なく千奈がいなかったことは稀にみる異常なケース」と指摘し、それにも関わらず千奈ちゃんについて勝手に判断したことは「結果として千奈を見殺しにした行為は子供の命を預かる保育士としてあるまじき行為」と非難。 さらに、「何度も千奈がいない違和感に気が付いていながら行動に移さなかったことは子供の安全や命を軽視していることにほかならない」と責め、元クラス担任の法廷での発言に触れつつ、「自分を守るため、すぐにバレる嘘をついた。事実と異なる発言を法廷でしたことから、反省していないと感じた」と述べた。 また、元園長に対しても「無責任さと反省の無さは許されるものではない」と厳しい目を向け、「元園長の行動がどれほど深刻な結果をもたらしたのか、そして私たち遺族にどれほどの苦しみを与えたかということを理解しているのか。元園長の言動からは千奈の命を軽視し、結果を受け入れる用意すらできていないことが明白」と糾弾。 これまでの裁判で、川崎幼稚園では園児の置き去りを防ぐためのチェック体制の構築や職員間の情報共有がなされておらず、マニュアル化されていなかったことが明らかになっているが、こうしたことから元園長の責任を問いつつ、「証拠に目を通すという公判に臨む者がすべき最低限の作業すら行っていない。まったく反省していないことは明らか。子供の命を守るはずの園長が、子供を殺したことの重大さをいまだに自覚できていない」と怒りの表情を見せた。