世界的な債券利回り急上昇、22年や23年の株価急落時に酷似-不安募る
アムンディからシティ・ウェルス、INGに至るまで、金融機関の間では高金利の新時代だとの認識が広がっており、オプション市場では5%に備える動きが出ている。
不吉な既視感
世界的に債券利回りが急上昇し、かつて株価下落を招いた状況に近づいている。
9月半ばからほぼ一本調子で水準を切り上げた米10年債利回りの動きは株価が急落した22年、23年と酷似している。今回は株高一服といった程度にとどまっているが、利回り上昇が続けば株価に下げ余地が生じる。
クリスチャン・ミューラーグリスマン氏らゴールドマン・サックス・グループのストラテジストは、「株式と債券利回りの関係は負の相関に戻った」と指摘。良好な経済データなしに利回りが上昇を続ければ、株式相場にはマイナスだとの見解を示し、「債券が下落する一方で株式は比較的底堅く推移してきたが、経済成長にとって悪いニュースが出れば、調整が入るリスクは短期的にやや高くなったと考えている」と論じた。
長期債利回りの上昇幅が大きいために利回り曲線がスティープ化したが、これは米国の財政およびインフレへの懸念を示唆しているとストラテジストは指摘。予想インフレであるブレークイーブンインフレ率(BEI)ではなく、実質利回りが動きの大半を占めている。
今のところ、インフレ鈍化と底堅い景気、段階的な金融緩和が同時進行する「ゴルディロックス(適温相場)」シナリオの実現を市場は確信している様子だ。とりわけ米国株について、大半の投資家は極めて強気で新年に入った。トランプ次期政権の政策や関税によるインフレ圧力は軽視されている。
UBSグループのストラテジスト、ジェリー・ファウラー氏は「実質利回りが全てで、インフレではない」と述べ、利回りの急上昇は「全て長期債で、短期債ではない。これは市場が現時点で米国の生産性改善に非常に強気で、関税のエスカレートに対する懸念がほぼゼロであることを示している」とコメントした。