「歌川国芳展 ―奇才絵師の魔力」(大阪中之島美術館)開幕レポート
大阪中之島美術館で、江戸時代末期に活躍した浮世絵師・歌川国芳(1797~1861)の画業を紹介する大規模な展覧会「歌川国芳展 ―奇才絵師の魔力」がスタートした。会期は2025年2月24日まで。担当学芸員は清原佐知子(同館学芸員)。 歌川国芳はその無尽の想像力と圧倒的な画力によって、斬新な作品を数多く世に生み出してきた。奇想天外なアイデアや、現代にも通ずるデザイン力は、浮世絵という枠や時代を超えて多くの人々を魅了し、国内外でいまなお高い人気を誇っている。 大阪で国芳を大規模に紹介する展覧会はおよそ13年ぶり。会場では、国芳の仕事を「武者絵」「役者絵」「美人画」「風景」「摺物」「動物画」「戯画」「風俗資料」「錦絵」など、ジャンル別に紹介している。 第1章では、国芳の出世作でもある「武者絵」を取り上げている。当時「役者絵」や「美人画」が主な人気ジャンルとして確立されていたなか、歌川豊国(初代)の弟子であった国芳は「通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)」シリーズで一世を風靡し、「武者絵」を新たな人気ジャンルへと押し上げた。 その卓越した画力はもちろんのこと、国芳ならではの構図や三枚続きのワイドな画面を用いた迫力ある画面が、元となるストーリーの世界観をよりドラマチックなものへと昇華させている。 第2章では、当時の人気ジャンルのひとつであった「役者絵」を紹介している。国芳が絵師になりたての頃、すでに役者絵のジャンルは歌川派の絵師らによって市場が独占されており、師匠である初代豊国や兄弟子に当たる歌川国貞が人気を博していた。やがて国芳は、国貞らとも異なる独自の表現が注目されるようになるが、とくに《日本駄右ェ門猫之古事》のような大掛かりな仕掛けの舞台をユニークに描いている点や色彩の豊かさには注目すべきところがある。
文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)