ビジネスメールの書き出しは何が正解?相手やシチュエーション別の書き出し例を紹介
ビジネスで信頼関係を築いていくためには、第一印象が重要。メールでも、書き出しを意識すれば印象が変わり、その後のやり取りがスムーズになる可能性があります。 ビジネスメールの書き出しの考え方やポイントなどについて、伝える力【話す・書く】研究所所長、山口拓朗ライティングサロン主宰・山口拓朗さんに伺いました。
ビジネスメールの書き出しが重要である理由
メールを始め、ビジネス文書は書き出しが重要。書き出し部分に何が書かれているかによって、人は送り主の「人となり」など、いろいろなことを無意識のうちに判断しています。 特にビジネスメールの場合は、その人の性格や人間性、志向、仕事への向き合い方なども表れやすいので、書き出しから気を抜かないことが大切です。 ただ、書き出しはある程度パターン化されていて、さほど複雑ではありません。後述する例文を参考にしながら、相手との関係性やシチュエーションに応じて書き分けるといいでしょう。 ポイントは、「相手が求めていることを書く」こと。つまり、要件をシンプルに、かつわかりやすく伝えることを意識しましょう。 例えば、「相手が大事なクライアントだから」と、過剰にかしこまった書き出しをする人がいますが、そんなことはまず求められていませんし、まどろっこしくなり要点が伝わりにくくなる可能性があります。さらには、「このメールに返信するときには、同じぐらいかしこまって書かなければならないのか」とうんざりさせてしまう恐れもあります。どんな相手に対しても、相手の立場に立った誠実な書き出しを心がけましょう。
ビジネスメールの書き出しQ&A
ビジネスメールの書き出しに関するお悩みポイントや素朴な疑問について、説明していきましょう。 ◆書き出しの基本構成は? メールの基本的な構成要素は、1. 件名、2. 宛名、3. 挨拶、4. 自己紹介、5. お礼や目的など、6. 本文(結論)、7. 本文(詳細)、8. 相手にしてもらいたい行動、9. 締めの挨拶、10. 署名、の10要素になります。 このうち、書き出しに相当するのは1から5になります(件名は最初に目に入る項目であり、書き出しに含めて説明します)。 1. 件名 件名は、一目で内容や要件がわかるように書きましょう。例えば「企画書をお送りします」「○○システムの納品期日の件」「次回打ち合わせの日程調整について」など。稀に、送り主の社名と名前だけが書いてあったり、「先日はありがとうございました」とだけ書かれていたりするような、用件が想像できないメールがありますが、受け手によっては非常にストレス。後回しにしたり、場合によってはスパム扱いされたりする可能性もあるので注意しましょう。 2. 宛名 「どこまで書けばいいのか」と悩む人が多い宛名。基本的には社名と名前(フルネーム)で十分。部署名やチーム名まで無理に入れなくても大丈夫です。2回目のやり取りからは、社名は省略し、「山田様」など名字だけでOKです。 なお、漢字の間違いにはくれぐれも注意を。例えば「わたなべ」という苗字には、渡辺、渡邊、渡邉、渡部などさまざまな漢字があります。「さいとう」も斉藤、斎藤、齋藤、齊藤などがあり、間違えられることを嫌がる人もいます。相手のメールに返信する場合は、署名からコピー&ペーストすることをお勧めします。 3. 挨拶と4. 自己紹介 「お世話になっております。株式会社○○の小川一郎です」という挨拶と自己紹介が一般的。ただ、初めて連絡を取る相手の場合は、「お世話になっております」の代わりに、「初めまして」もしくは「初めてご連絡させていただきます」という挨拶のほうがスマート。必要に応じて、簡単な自社の紹介(どんなものを扱っている会社か)や自分の紹介(こんな商品の営業を担当している、など)を追記するといいでしょう。 5. お礼や目的など 相手と面識がある場合は、例えば「先日は打ち合わせの機会をいただきありがとうございました」「昨夜は遅くまでお疲れ様でした」など、お礼やねぎらいの言葉などを入れると、本題に入る前のいいワンクッションになるうえ、プラスアルファの好印象も与えることができます。 加えて、「本日は○○の件でご連絡しました」など、メールを送った理由や目的を冒頭に入れると、その後の本題に入りやすいという効果があります。 ◆敬語はどれぐらい守るべき? 相手との関係性にもよりますが、ビジネスメールは敬語の中でも尊敬語ではなく、謙譲語が適しています。 尊敬語は、相手や相手の行動に敬意を払うときに使う言葉。謙譲語は、自分がへりくだることで間接的に相手を立てるときに使う言葉です。尊敬語で固めすぎると、前述のような「過剰にかしこまった書き出し」になってしまう可能性が高いので注意が必要。謙譲語で相手を適度に立てるぐらいが、読みやすい書き出しになります。 もし気心のしれた親しい関係性であれば、社外の人であっても丁寧語がなじむケースもあります。丁寧語とは、「借りる→借ります」のように、相手や内容を問わず、表現を丁寧にしたり、上品にしたりするケースで使う言葉のこと。「お借りいたします」と謙譲語で書くと仰々しく感じられる時は、丁寧語を検討しましょう。 なお、初めてかつ自分よりかなり目上の人に対しては、礼節を尽くしたほうが無難。かしこまり過ぎない程度に尊敬語を取り入れるといいでしょう。 ◆時候の挨拶は入れたほうがいい? 例えば「山の木々もすっかり色づいてまいりましたが、いかがお過ごしですか?」「新緑が美しい季節となりましたが、お変わりありませんか?」などといった時候の挨拶。プライベートなメールならば入れてもいいかもしれませんが、ビジネスメールはスピーディーなやり取りが大事。省略して問題ありません。 ただ、ニュースになるほど酷暑が続いているとか、まさに台風が直撃しようとしている、大雪が降っているなど、「今まさにトピックとなる天候や気候の変化が起きている」ような場合は、「酷暑が続いて体力的に厳しい日が続きますが…」「台風が明日関東上陸とのことですが…」など、相手を気遣ったり心配したりする意味で軽く触れるのは好印象です。 ◆社内の同僚相手であればラフな書き出しでもよい? 前述のように、ビジネスメールは「相手が求めていることを書く」のが基本。「同僚や後輩だからラフに、先輩だから敬語で」と画一的に決めてしまうのではなく、相手との関係性を踏まえてカジュアル・フォーマルのバランスを考えましょう。したがって、相手がラフなやり取りを求めているのであれば、それに合わせるといいでしょう。相手が「お疲れ様です」を端折って本題に入ってきたのであれば、返信する際に同様に省略しても問題ありません。 判断に迷ったら、相手からのメールの書き方に合わせましょう。通常、ビジネスメールでは「!(ビックリマーク)」や「(笑)」、顔文字などは使いませんが、相手が使って来たらそれに乗っかってもOK。相手が社外の人であっても、「お世話になります!先日の打ち合わせは盛り上がりましたね(笑)」などと砕けた表現をしてきたら、こちらも「思いもよらないアイディアが飛び出して驚きました(笑)」のように、多少砕けた書き出しにするとコミュニケーションが円滑になります。