世界GP王者・原田哲也のバイクトーク Vol.128「暑すぎた鈴鹿8耐、SSTはしばらくBMW・M1000RRの天下になりそう」
チームとして2年連続優勝を狙ったが……
僕は今年の8耐もNCXX RACING with RIDERS CLUBのチーム監督として参加させてもらいました。結果は、レース後の車検で失格……。去年はNST(ナショナルストック)という8耐独自規定のクラスで優勝しましたが、今年は今まで通りのSST(スーパーストック)へと変更。それに伴ってのテクニカルレギュレーションの変更点の理解に不足がありました。 EWC(世界耐久選手権)としては、これまで以上にSSTクラスへの参戦を増やしたいようです。そのこともあって、レギュレーションをより厳格に適用するという姿勢を示した形ですね。レースをする限り規則は守るべきものですから、仕方がありません。 ──ライダーの成長を促すべく積極的なコミュニケーションを心掛けたという原田哲也監督。
ただ、例え失格ではなかったとしても、クラス優勝は厳しかったと思います。決勝レース中に転倒もありましたが、それを抜きにしてもやはり厳しかったでしょう。 SSTクラスは改造範囲が厳しく制限されているため、ほぼ市販車と同じ状態でレースを戦うことになります。そして今年の8耐SSTクラスでは、BMW M1000RRが1-2フィニッシュを決めています。M1000RRは、市販状態からリヤまわりがクイックリリース対応タイプになっています。一方僕たちのチームが使っているYZF-R1Mは通常のリヤまわりなので、タイヤ交換にかかる時間がまったく違うんです。 どれぐらい違うかと言うと、1回のタイヤ交換作業で20秒ぐらいは差が出ます。今の8耐は非常にシビアなタイム争いが展開しますので、ピットワークでの20秒差は致命的です。 しかもM1000RRは、エンジンも速い! ストレートではEWCクラスのマシンを抜き去るシーンも見られました。今後数年、SSTクラスはM1000RRの天下になると思います。 来年のことは何も決まっていませんが、もしNCXX RACINGがYZF-R1Mを使うなら、選択肢はふたつあります。ひとつはEWCクラスにスイッチすること。改造範囲が広がるのでクイックリリースも導入できますが、その一方で、勝負できるマシンを作るためにはパーツ代だけで4ケタ万円と、莫大な費用がかかります。 もうひとつは、SSTクラスに継続参戦すること。これは国産4メーカーのマシンを使うチーム共通の課題になると思いますが、クラス優勝を狙うのは厳しく、目標を大きく変えざるを得ません。でも、現実的な選択です。