「一緒に逝ってくれるか?」90歳父を殺害…承諾殺人に問われた60代息子に執行猶予判決 大阪地裁
●なぜ周囲に相談できなかったのか
検察官からは、現在の病状について質問がされた。医師からは、原因は首ではなく脳であるとし、薬の量をコントロールするように指示されるようになった。最近では左手の痺れは残るものの、その他の痺れや倦怠感は収まってきているという。 周囲に相談できなかったことを問われると、父親がデイサービスの最中に「死んだ友だちが迎えにきた」などと言っていることを聞き、それが被告人自身が自殺を思ったことと重なり、突発的に判断したという。 最後に裁判官が質問した。 裁判官「今思えば、当時どうすべきだったと思っていますか」 被告人「一人で逝ったら良かったです」 裁判官「今もそう思っているんですか?」 被告人「報道では、『介護疲れの殺人』などと書かれましたが、本当は自分で死んで父を連れて行くかという話でした。それでも、周りの人にも『死んだらアカンで』と支えられて、今では本気で店を再建しようと思っています」 と一つ一つ言葉を絞り出すように答え、最後に「店を必死に再建して長生きすることが供養になればと」と父への思いを供述した。
●判決時に裁判長がかけた言葉
判決は懲役3年、保護観察付執行猶予4年であった。生命を失うことになった重大な結果と、承諾はあったものの、自殺の道連れにしようした意思決定に刑事責任は重いと厳しく述べた。 その一方で、逮捕当初から罪を認め、事件を反省している点。そして、身体が回復しつつあり更生の意欲を見せていることから、「社会内において冥福を祈りながら日々を送らせるのが相当」と、執行猶予の理由を説明した。 最後に裁判長は被告人に対し「今回取り返しのつかない結果となった当時の判断を、人生を通して振り返ってください。ただ、嘆願書にあるように、店を再建することで、あなた自身の人生をまっとうに過ごすようにしてください」と説諭した。