子供に「敵を突き殺せ」と教えた時代… ”軍国少年”のリアルな記憶を紙芝居にした作家
■作家がほれ込んだ「軍国少年の記憶」 田中さんは太平洋戦争が始まった時、福井市で今の小学校に当たる国民学校3年生で、敗戦を迎える中学1年生までの4年間を、事実に即して小説に書きました。その小説の中身に、寮さんはほれ込んでしまいました。 寮美千子さん:読ませていただいて、これはぜひ「みんなに分かるように紙芝居にしたいな」と思いました。まとめて、紙芝居の原稿にして絵描きを探したら、絵描きが見つからない!内容を見て「難しくて無理です」とかいろいろ言われ絵描きが見つからない中で、たまたまフェイスブックでしかつながっていなかった、真野正美さんという帯広の画家さん。作品館も帯広に建っているんですよ。有名な画家さんなんだけど、困って駄目もとで聞いてみたんですね。そしたら「えええー…」。1週間くらいしてから「わかりました。田中先生の志に感動したので、やらせてください」って。「期間が短いんですけど、いいですか?」「頑張ります」って言って。 寮美千子さん:田中先生の行った学校の校舎の写真とか、軍事教練の時の写真とか、戦時中のいろいろな資料をダンボールに集めて、「この絵には、この資料」と全部資料的にはうちでバックアップして描いていただきました。そういうことで出来上がった作品が、仲間内でちょっと見せるだけのつもりだったんだけど、あまりにもクオリティが高く、しかも無料で描いてくれたので、「これはまずいぞ、これは出版しなきゃいけないな」と思い、わずか300部ですけれども、紙芝居を出版することができました。 絵・真野正美(まの・まさみ):画家。1958年大阪府生まれ。カーデザイナーとしてトヨタ自動車に勤務ののち、帯広市郊外に移住して画業に入る。六花亭が60年以上にわたって刊行している月刊児童詩誌『サイロ』の表紙画を2010年より担当。2017年、中札内美術村に「真野正美作品館」が開館した。 ■作家自ら「名調子」で上演する紙芝居 真野さんは2か月半で33枚の紙芝居を描き上げたのだそうです。この絵はすごいな、と私も思いました。寮美千子さんは、各地で上演しています。7月29日と30日は、福岡市で披露してくれました。聞いているのは10人程度、小さな集まりでした。寮さんの名調子をお聴きください。