『シビル・ウォー アメリカ最後の日』主演キルステン・ダンストが語る「戦場ジャーナリストへの深い敬意」
キルステンが提案した緑色のドレスは戦争映画へのオマージュ
もう一つ、キルステンは自身の思いが詰まったエピソードを教えてくれました。それは旅の道中で一行が、奇跡的に平和が維持されている街に立ち寄り、洋服屋でリーがジェシーに勧められて緑のドレスを試着するシーンです。 『メリー・コルヴィンの瞳』と共に、共演者らと一緒に観た1985年製作の戦争映画『炎628』にも強い衝撃を受けたというキルステン。第二次大戦中の白ロシアの村を舞台に、ドイツ兵による狂気の暴虐にさらされ、迫害される村人たちの姿を描いた、一度観たら絶対に忘れることのできないすさまじい作品です。 この映画の冒頭に登場する少女が緑色のドレスを着ていることから、この非常に重要な戦争映画へのオマージュとして衣装デザイナーに緑のドレスを着ることを提案したと言います。殺伐としたシーンが多い中で、印象に残るリーとジェシーのエピソードでもありますね。
報道カメラマン志望の若者ジェシーとベテラン記者たちの対比
【画像】若いジェシーに対して、厳しいことも言うが心配してアドバイスをするリー。世代の違うジャーナリストのあり方、二人の関係性にも注目したい。
このリーとジェシーの関係性も、いろいろと解釈が分かれるところではないでしょうか。まっすぐに考えれば、リーはジェシーの師として彼女を導き、守り、そして世代を越えてジャーナリズムの精神が受け継がれていくという見方ができます。一方で、私自身は年齢的にもリーに気持ちが寄りがちで、もっと複雑なものがあるようにも感じました。 リーはジェシーにかつての自分の姿を見たのか、それとも今まさに自分の中で失われていくジャーナリストとしての何かがジェシーの中にあると気づいてショックを受けたのでしょうか。 予告編にも使われていて、映画を観た多くの人が衝撃を受けたシーンとして、ジェシー・プレモンスが演じる西部勢力の兵士がリーの仲間のジャーナリストたちを容赦なく撃ち殺すくだりがあります。その惨劇に遭って、場数を踏んでいるはずの年配のジャーナリストたちが壊れていく一方で、ジェシーは残酷なまでに生き生きとした輝きを増すようにも見えます。新しい世代の台頭を実感したからこそ、リーは最後にあのような行動をとるに至ったのでしょうか。 リー役のキルステンとジェシー役のケイリー・スピーニーが最初に撮ったシーンは、ホテルのロビーで2人のキャラクターが実際に会話をするシーンだったそうです。リーがジェシーに防弾チョッキをつける必要があるとアドバイスを与える場面は、「2人の関係性を確立する上で重要なものであると感じた」とキルステン。 「2週間のリハーサル期間中、ケイリーとは互いによく知り合うことができ、強い信頼関係を築くことができました。さらに私は彼女に、自分たちが演じるキャラクターには『前世』でつながりがあったと想像してみるという創造的な方法を提案したんです。これはキャラクター間の感情的な重みとつながりを深めるのに、非常に役立ちました」 2人のケミストリーは本作にとって重要な要素の一つです。映画をご覧になったみなさんは、この2人の関係とリーの最後の決断をどのように受け取ったでしょうか。これもまた解釈には幅がある問題ですよね。そのようなさまざまな対話、議論を呼ぶことこそ、良い映画の証でもあるでしょう。