『シビル・ウォー アメリカ最後の日』主演キルステン・ダンストが語る「戦場ジャーナリストへの深い敬意」
映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が描くのはどんな世界か?
【画像】2期までと決められているが、憲法に違反して3期目に突入する大統領(ニック・オファーマン)。三権分立を揺るがすファシズム政権が国家を分断する。
監督の狙いは「善悪を簡単に識別できない、単純な答えはない」作品
まずは、劇中で明確には語られない、あるいはセリフなどにちりばめられている本作の前提を簡単にまとめてみましょう。 なぜ内戦が起きたかは明らかには描かれていませんが、現職の大統領は憲法修正第22条を曲げて3期目に就任し、FBIを解体するなどファシズム政権が生まれたことがわかります。 一方、政府軍に対抗するのが、共和党支持者が多いテキサス州と民主党支持者が多いカリフォルニア州が同盟を組むという、現実ではあり得ないような連帯によって生まれた「西部勢力」です。戦場と化した国土は、もはや誰がどんな政治信条を持ち、誰を敵と認識して攻撃しているかもわからない状態。 ガーランド監督自身は今回の大統領選ではカマラ・ハリス支持を公言していますが、映画では「善悪を簡単に識別できない、単純な答えはない」作品にしたかったとのこと。何にでも白黒つけたがるSNS上の悪しき風潮への抵抗でもあるでしょう。 そうした中、有名な報道カメラマンのリー・スミス(キルステン・ダンスト)とジョエル、リーの師であるサミー、そしてリーに憧れる若いジェシー(ケイリー・スピーニー)の4人のジャーナリストが、14ヶ月も取材を受けていない大統領に単独インタビューを行うべく、ニューヨークからホワイトハウスを目指して恐怖と狂気の旅に出ます。 イギリス人のガーランド監督が、アメリカを舞台に選んだところが興味深いですよね。
【画像】政府軍に反旗を翻す西部勢力の戦いは、もはや何のために、誰をターゲットとしているのかも混沌とした状態に見える。リーたち一行が行く先々で見る荒廃したアメリカの様子は「近未来」というにはあまりにも生々しい。
キルステン・ダンストは「ジャーナリストが社会で果たす重要な役割が十分に評価されていない」と感じた
著名な報道写真家のリー・ミラーと戦争ジャーナリストのメリー・コルヴィンをモデルとしたリー・スミスを演じるキルステンは、主にコルヴィンを参考にしたと言います。特にコルヴィンが2012年にシリア内戦取材中に砲弾で命を落とした彼女の行動を追うドキュメンタリー映画『メリー・コルヴィンの瞳』(U-NEXTほかで配信中)は、これまで観た映画の中で最も衝撃的な作品の一つであり、同時に「ジャーナリストとその仕事に対して深い敬意を抱くようになった」と語りました。 「コルヴィンの足跡や、アトランタのジャーナリストの友人との会話を通じて、私はジャーナリストは真実と情報を一般市民に提供するために、本質的に『毎日命を懸けている』ということを理解し、直接的な洞察を得ました。ジャーナリストたちの勇敢さと献身に感銘を受け、個人的な犠牲を払う彼らに共感し、そしてジャーナリストが社会で果たす重要な役割が十分に評価されていないことに気づいたのです」