フジオカ&武井、美は無理な設定をも超越する『今からあなたを脅迫します』
ディーン・フジオカと武井咲がひとつ画面に並んだとき、「この2人、お似合い!」と震えてしまった。15日スタートした『今からあなたを脅迫します』(日本テレビ系)は、脅しで事件を解決する「脅迫屋」の千川完二(フジオカ)とお人好しで謎の金持ち女子大生、金坂澪(武井)が繰り広げるコメディタッチのサスペンス……いや、サスペンスタッチのコメディ?
浮世離れしたレベルの美男美女のダブル主演に脇役も見逃せない
ついこの間まで確か銀座で金持ちを食い物にしてさんざん恨まれていたかと思いきや(ドラマ『黒革の手帖』)、一転、化粧っ気のない、どこかズレているけれどピュアな正義感を持つ女子大生に変身している。しかもカネに困っていないどころか、困っている人のためになら平気で600万円だろうが3000万円だろうがキャッシュで払ってしまえる脅威のフトコロ状態。まさにカネを支配している。こんな好対照な役柄に短期間でスイッチした武井だが、世間知らずなとぼけっぷりがいい。 フジオカも武井も、浮世離れしたレベルの美男美女。それも、ともに顔立ちがさっぱりしているせいか、よく似合うのだ。 美男美女というのは必ずしも褒め言葉になるとは限らなくて、気をつけて使わないと、逆に貶めることにつながる場合もある。とかく演技の世界ではルックスが美しすぎると、どんなに一生懸命芝居をしてもなかなか見てもらえない。演技力に関して、実際の実力より低く評価されがちだ。それゆえ美しいといわれることを嫌う美男、美女の役者も少なくないし、美しさがハンディキャップになることも珍しくない。 だが、映像作品である限り、見映えも実力のうちではないだろうか。フジオカも武井もルックスだけではなく、それぞれに個性的で魅力のある役者だが、このドラマの場合は、それ以上に2人がとっても素敵にフィットしていることがポイント高し。2人を追っているだけで、1時間ぐらいすぐに過ぎてしまう。それって大切なことだと思うし、かつて銀幕のスターと呼ばれた人々もそうだった。 中心の2人を外し、周辺の人物を細かく見ていけば、やはり共演陣がいい味を出して2人を支えていることもわかる。鈴木伸之が出てきたときは、「有島くん、久しぶり!」と感激したし(春のドラマ『あなたのことはそれほど』での役名、カッコよくて同性の私もクラッ)、『ひよっこ』では控えめな登板だった島崎遥香も今回は結構目立ちそう。 現実的に考えれば無理のある場面も多いけれど、そこはダブル主演の2人が強引に引っ張って行ってくれそうだ。フワッと楽しんだ者勝ち。 次も観たい度 ★★★★☆ (文・写真:志和浩司)