妊活や体質改善に「漢方薬」が効くワケ 受診から処方までの流れも医師が解説!
妊活や体質改善に漢方薬を取り入れるには?
編集部: 妊活や体質改善に漢方薬を取り入れるには、どうしたらいいのでしょうか? 寺師先生: まずは不妊治療を専門におこなっている漢方専門医や、漢方治療を積極的におこなっている医師を受診しましょう。ドラッグストアや薬局などでも購入できますが、漢方薬には非常に多くの種類があり、自分に合っていない漢方薬を選んでしまうと効果が出にくいどころか、副作用が出ることもあります。そのため、正しく医師に診断してもらうことが必要です。 編集部: 診察はどのようにしておこなわれるのですか? 寺師先生: 漢方の診察には、「望診(ぼうしん)」「聞診(ぶんしん)」「問診(もんしん)」「切診(せっしん)」の4種類があります。望診では、体型や姿勢、表情、動作を見たり、皮膚、髪、舌などを観察したりします。聞診は声、咳、においなどで状態を調べることです。問診では、自覚症状や生活習慣、既往歴、嗜好などを言葉で確認します。切診はお腹に触れたり脈を測ったり、患者さんに直接触れることで、腹診や脈診などが当てはまります。 編集部: 様々な方法があるのですね。 寺師先生: 特に私が重要視しているのは、切診です。お腹を触ることでその人の健康状態やトラブルがはっきりと見えてきて、問診だけではわからないようなことも気づかせてくれます。 編集部: 診察の後は? 寺師先生: 診察の結果を総合的に判断し、漢方の治療原則である「証」を立てます。患者さんに対して、どのような処方が有効であるかを決定することが証です。 編集部: その証に基づいて、漢方薬が決定されるのですね。 寺師先生: そのとおりです。漢方薬には無数の種類があり、診察によって見極められた患者さんの証に合わせ、生薬の種類や分量を調整しながらオーダーメイドで処方します。
妊活や体質改善に漢方薬を使用する際の注意点
編集部: 妊活や体質改善に漢方薬を使う場合には、保険適用になるのですか? 寺師先生: 漢方薬には生薬とエキス剤があり、それぞれ保険適用となる種類が定められています。エキス剤の多くは保険適用とされていますが、エキス剤はいわば「できあい」のものなので、一人ひとりに応じて調合したり、加減したりすることはできません。また、保険適用の生薬は品質の面で限界があるため、もっと高い効果を期待したいという場合には、良質な生薬を保険適用外で処方することになります。 編集部: 妊活に漢方薬を使う場合、どれくらいの期間で効果が期待できるのですか? 寺師先生: 漢方薬は効果が出るまでに時間がかかるというイメージがあるかもしれませんが、状態や体調によっては飲んですぐ効果を実感できる場合もあります。当院でおこなう不妊治療の場合は、3カ月~半年の治療期間が目安ですが、なかには初診で不妊が治ったという人もいます。 編集部: 初診で治るとはすごいですね! 寺師先生: 西洋医学で不妊治療をおこなった結果、上手くいかず、やっと漢方治療にたどり着いたという患者さんが当院では多いので、比較的患者さんの平均年齢は高めです。現在、当院での治療後に妊娠する人のうち3割が40歳以上、その4割が自然妊娠です。もし今、不妊治療に取り組んでいるけれどなかなか結果が出ないという場合は、漢方治療も候補に入れるといいかもしれません。 編集部: 西洋医学の不妊治療と漢方薬は、併用できるのですか? 寺師先生: はい、問題ありません。むしろ、漢方薬と西洋薬を併用することで、さらに効果が期待できる場合もあります。また、妊娠した後も、妊娠を継続できる体を作るためにも、漢方薬の服用を継続するのがいいと思います。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 寺師先生: 現在、不妊治療に漢方薬を取り入れる女性が増えています。しかし、「漢方薬を飲めば十分」というのではなく、「食事・睡眠・運動」という生活のベースがあって、初めて漢方薬の効果が表れることを忘れないでほしいと思います。いくら良質な漢方薬を服用しても、体のベースができていなかったら意味がなくなってしまいます。特に重要なのは運動です。最近の女性は運動不足のことが多いのですが、筋肉があれば冷えも改善されますし、筋肉があった方が脂肪も燃焼しやすく、肥満予防にもなります。少なくとも腕立て伏せを10回できるくらいの筋肉を養い、生活習慣全般を見直すところから不妊治療を始めてほしいと思います。