カカオ原産地で横行する児童労働、「ブラックサンダー」は撤廃目指し調達先を変更 日本のチョコ会社で進む現地の農業支援と環境改善
今春、国際人権団体などが世界の大手チョコレート企業や商社計53社の原料調達における人権・環境対応を評価した「世界チョコレート成績表」を発表した。日本企業で首位となったのが油脂大手の不二製油グループ本社(大阪市)だ。不二製油は有楽製菓にも児童労働に頼らないカカオを供給している。 不二製油はサステナブル(持続可能)な原料調達を目標に、サプライチェーン(供給網)上における児童労働を2030年までに撤廃するとの目標を掲げる。信達等執行役員油脂事業部門長は「児童労働の根底にあるのは貧困。個々の農家の家計を豊かにする以外、児童労働撤廃は難しい」と話す。 信達氏によると、不二製油の児童労働対策は、2019年にアメリカの業務用チョコ大手ブラマー・チョコレート・カンパニーを完全子会社化したことで加速したという。ブラマー社は早くからこの問題に着目し、撲滅に取り組んできた。信達氏は「世界チョコレート成績表では、ブラマー社と一緒に取り組んでいる内容が評価されたことが大きい」と話した。
不二製油は西アフリカの農家を対象に気候変動に強いカカオ栽培を支援し、収量や所得の向上を後押しするなどのプログラムを実施。現地スタッフを通じた児童労働の監視活動にも力を入れる。 信達氏は「現地の政府筋を支援するのか、各農家を直接支援するのか、なかなか難しい問題もある」とこぼす。「乗り越えなければならない課題、目標はあまりに大きいが、一つ一つのプログラムを積み上げていく中で可能性が見えてきたらそれを広げていくのが最も近道ではないか」と話す。 ▽カカオ栽培のために失われるゴリラの生息地 有楽製菓の取り組みのきっかけとなった認定NPO法人ACEの白木朋子副代表は「日本企業もやっとカカオ産業の児童労働対策に動き出したが、欧米では2000年ごろには既にこの問題に関心が持たれていた」と指摘。「個別の企業の取り組みには限界があるため連携が必要。『もっとここ、一緒にできるよね』という方向に進んでいければ」と期待する。