カカオ原産地で横行する児童労働、「ブラックサンダー」は撤廃目指し調達先を変更 日本のチョコ会社で進む現地の農業支援と環境改善
チョコレート菓子「ブラックサンダー」を主力商品とする有楽製菓(東京)は2020年、自社製品に使う全てのカカオ原料を児童労働に頼らないものにすると発表した。調達先の変更は簡単ではなかったが、全製品の約96%の原料を切り替えた。河合辰信社長は「商品を通じてお客さんに笑顔を届けたいと思ってやってきたが、その過程で誰かの笑顔を搾取しているとしたら矛盾だと思った」と話す。 チョコレートの原料カカオを生産する西アフリカでは、子どもが学校にも行かず収穫などの作業に従事させられる児童労働が横行する。欧米の企業が先行していたが、日本の菓子メーカーの間でも児童労働に頼らないカカオだけを使用し、さらには現地農家に農業支援などを実施して労働環境の改善を手助けする動きが加速している。(共同通信=板井和也) ▽150万人以上の児童が農作業に従事 有楽製菓の河合社長によると、調達先変更に取り組み始めたきっかけは、児童労働問題を専門とする認定NPO法人ACE(エース)を通じ、ガーナで学齢期の子どもが学校に行けずに労働を強いられている現状を聞いたことだった。ガーナは日本にとって最大のカカオ輸入相手国。鋭利な刃物で実を割ったり、重い袋を頭に載せて運んだり、農薬を散布したり…。危険な作業も多い。世界最大の生産国コートジボワールと2位のガーナだけで計150万人以上の児童が作業に従事しているとも言われる。
既存の取引先に相談したが、「急にそんな原料は用意できないと渋い反応をされたり、コストが上がりますよと言われたりした」(河合社長)。原料を変えることで、商品の味が変わってしまう懸念もあった。 それでもただ1社、児童労働を排した原料を提供できると申し出た海外メーカーと新たに契約し、原料の一部を切り替えた。その後、切り替えられた国内メーカーも有楽製菓の本気度をくみ取り、児童労働に頼らない原料を供給するようになったという。こうしたカカオは農家への農業指導や、児童労働の監視活動などに対する支援金を上乗せして購入している。 有楽製菓は2025年までに全製品のカカオを児童労働に頼らないようにする目標を掲げ、ブラックサンダーは既に全て切り替えた。河合社長は「ゴールはこの会社が児童労働に配慮したものに切り替わることではなく、日本の業界全体が当たり前にそうなっていくこと」と話す。 ▽根底にあるのは貧困、支援プログラムの積み重ねが重要