Facebook、若返りに注力 「年配者の牙城」を払拭
米メタは、主力事業であるSNS(交流サイト)の「Facebook」で、若年層ユーザーの獲得に力を注いでいる。先ごろ米ニューヨークで開催したイベントで、若年成人の利用が過去3年間で最高になったと説明し、その成果を明らかにした。「今後成功するためには、若者向け次世代ソーシャルメディアを構築する必要がある」と、方針転換の必要性を強調した。 ■ 北米で若者4000万人超が毎日利用 メタによると、米国およびカナダでは4000万人以上の18~29歳ユーザーがFacebookを毎日利用しており、この数は過去3年間で最も多いという。この年代のFacebookアプリの利用は5四半期連続で増加した。 Facebook責任者であるトム・アリソン氏はイベントで「Facebookは依然、すべての人に向けたプラットフォームであるが、次世代ユーザーに対応するために、若年層を念頭に置いた大きな変更を行った」と今後に向けた意気込みを示した。 Facebookは2004年当時、米ハーバード大学の学生だったマーク・ザッカーバーグ氏が大学キャンパスを模したネットコミュニティーを目指して立ち上げたサービスである。当初は大学のユーザーに限定した小規模なものだったが、やがて一般にも開放。3年後には5000万人のユーザーを獲得し、現在はグループ全体で世界中に約32億人のユーザーを抱える。ザッカーバーグ氏はこの5月に40歳となり、Facebookは創業20周年を迎えた。 ■ FB利用者、10代3割に大幅減 しかし、その過程で若年層にとって、魅力が薄れるサービスになっていったと英ロイター通信は報じている。メタでは売上高の98%をネット広告が占めている。消費者の流行をけん引する若年層は広告主にとって重要で、若者離れは同社ビジネスの衰退を意味する。
米国の世論調査機関ピュー・リサーチセンターが23年に実施した調査によると、米国の10代の若者のうち、Facebook を利用していると答えたのはわずか3分の1程度で、14年と15年に実施した調査と比べると大幅に減少した。16年以降、Facebookを利用していると答えた米国成人は約68%で推移しており、この比率にあまり変化は見られない。 こうしたなか、経営陣は「年配者の牙城」という評判を払拭すべく、若い世代にとってより身近な存在になるよう施策を講じている。 ■ 表示基準は「つながり」から「関心」へ 米ブルームバーグ通信によれば、そのうちの1つがアルゴリズムの変更だという。中国発の動画投稿アプリ「TikTok」は20年頃にユーザーの興味や好みに基づいたコンテンツを配信し、爆発的な人気を集めた。一方、Facebookはそれまで、主にユーザーのオンライン上のつながり、つまり「ソーシャルグラフ」を構成する友人や家族のコンテンツを配信してきた。 TikTokの人気が若い世代で高まるなか、メタの幹部はFacebookも同様の機能が必要だと考え、21年末にAI(人工知能)を活用した、新しい「レコメンデーション」アルゴリズムを構築した。Facebookがこれまで貫いてきたしてきたソーシャルグラフ戦略からの方針転換だ。 当初、主要画面に変更を加えることはビジネスに悪影響を及ぼすといった懸念もあった。だが、現在のところ新施策はよい成果を出しているようだ。メタによれば、ユーザーがFacebookのフィード(メイン画面)で閲覧する投稿のうち、個人のつながり以外の投稿が占める比率は平均30%に達し、2年前の2倍以上になった。 一方、広告収入は伸び、ユーザー数も増加した。22年から23年にかけて、米国とカナダのユーザー数は1000万人増加した。これに対し20~21年の両国での純増数はゼロだった。 Facebook成長の主な要因がフィード表示の変更にあるかどうかは、今のところ分かっていない。だが、ブルームバーグ通信によると、メタの幹部はこれを肯定的に捉え、今後も改良を続ける考えを示している。 Facebook上の数十億の写真、リンク、動画を対象としたランキング(表示の優先順位)の決定処理には複雑な計算が必要となる。幹部らは、今後もAIを活用し、若者がSNSに求めるものを追求していくとしている。
小久保 重信