小澤征爾さん亡き後の初OMF 沖澤さん圧巻の指揮とSKOの底力見せた祭典に 長野県松本市
長野県松本市などで開催し、4日に閉幕した国際音楽祭セイジ・オザワ松本フェスティバル(OMF)では、目玉のプログラムであるブラームスの交響曲全4曲を指揮する予定だった世界的指揮者アンドリス・ネルソンスさんが急きょ降板するアクシデントに見舞われた。だが、代役の公演は好評で、中でもOMF首席客演指揮者の沖澤のどかさん(37)の公演は、2日間ともスタンディングオベーションが起こるほどの興奮をもたらした。総監督の小澤征爾さん亡き後、初めての祭典で、サイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)の実力を再認識する機会にもなった。 ネルソンスさんの降板は突然だった。健康上の理由で来日できないという連絡が入ったのは、公演初日4日前。SKOメンバーでつくるSKOアドバイザリー委員会が中心に話し合い、交響曲第1番、第2番は、その数日前にOMF史上初の首席客演指揮者として、オーケストラコンサートでデビューした沖澤さんが振ることになった。 初日の8月16日、第2番の演奏が終わった瞬間、観客は総立ちとなり、拍手がやまなかった。「日本の音楽史の中で歴史的な瞬間だった」とSKOコンサートマスターの1人の矢部達哉さんは(56)は語る。「沖澤さんはみんながどうやりたいかを見極めて、プラス自分のものを乗せるみたいなウルトラCができるすごい指揮者」という。観客からも「ネルソンスを楽しみに来たけれど、沖澤さんにくぎ付けだった」(佐久市の男性25歳)「熱演が素晴らしかった」(大阪市の女性54歳)と好評の声が相次いだ。 SKOの力を再認識したとの声も多かった。観客アンケートは「沖澤さん、SKOの演奏が素晴らしい」というものが大半で、OMF実行委員長の臥雲義尚市長は「SKOの底力をみることができた」と評価する。 小澤征良SKO代表は「観客も一丸となっていた」と会場の空気を表現する。小澤征爾さんとSKOの演奏でも同じ気配を感じたことがあるという。「観客が『すごい体験をした』と受け止めて帰ることで、また(OMFに)戻ってきてくれる」。祭典の継続に向け、関係者の自信となったのではないだろうか。
市民タイムス