ネオナチの父親の言葉に込められた思い ドイツ映画『女は二度決断する』
『愛より強く』(2004)『そして、私たちは愛に帰る』(07)『ソウル・キッチン』(09)と世界三大映画祭を征したファティ・アキン監督。トルコ系ドイツ人であるアキン監督の作品は、トルコ、およびトルコ移民が抱える問題を扱う社会派作品が多い。ダイアン・クルーガーが、アキン監督に作品への出演を訴えた2012年のカンヌ映画祭でも、トルコの村に建設されたごみ処理場問題をめぐるドキュメンタリー『トラブゾン協奏曲~小さな村の大きなごみ騒動~』が上映されていた。果たしてクルーガーは本作『女は二度決断する』への主演が決まったわけだが、それは本作にとっても、クルーガーにとってもプラスに働いたのではないか。 クルーガーは、英国ロイヤル・バレエ団でキャリアを始め、パリでモデルとして成功し、ブラッド・ピット主演のハリウッド映画『トロイ』(04)で王妃を演じ、世界的スターとなった。世界の映画祭で高評価を得る作家と、ハリウッドスターのコラボレーションは、お互いにどんな影響を与えたのか? まずはその点からうかがった。
ダイアン・クルーガーは「最も準備している俳優だった」
ダイアン・クルーガー(クルーガー):今までにない素晴らしい役をいただきましたし、一緒に仕事をしていて心から楽しめました。実は(ドイツ出身にもかかわらず)初めてドイツ語で役を演じたのですが、ファティと組めて、友達……、兄弟ができたという気持ちでいます。今後もコラボレーションができれば嬉しいし、今回はその始まりかなと思います。 ファティ・アキン(アキン):ダイアンはドイツ人であると同時に、僕が仕事をした初めてのハリウッドスターでもあります。今まで組んだドイツ人俳優を悪く言っているように聞こえてしまうかもしれませんが、ダイアンには最高の経験をさせてもらいました。 ハリウッド俳優といえば、大きなトレーラーに、何人ものアシスタントがいて、すごく甘やかされているイメージでした。メイクひとつ決めるにも監督はずっとディスカッションしなくてはならず、挙句に「私には自分のヘアスタイリストがいるので」と言われ、制作で用意したスタイリストを使ってもらうために、また説得しなければならないとか。しかし、それは杞憂でした。もしかすると、ハリウッドでの経験がダイアンをそうでない俳優にしたのかもしれません。今回僕が感じたのは「最も準備している俳優」ということでした。聞いた話によると、ハリウッドの俳優は、監督が全く演出をしなくてもしっかり準備をして臨んでくれるそうです。逆にドイツ人の役者は監督の指示待ちが多い。「二歩歩いて、台詞を言って、二歩下がって」というように。彼女には、そういった指示は全く必要ありませんでした。