日本のエンジンはまだまだ進化する 将来のクルマの電動化支える3つの技術
●トヨタ・カムリの「高効率エンジンとハイブリッドシステム」
そんな空想は置いておいて、現実を担うのはハイブリッドだ。いままでコンベンショナルな動力はガソリンエンジンだったが、これからはそれがハイブリッドになるだろう。そして、今後はクルマのあちこちに貼られていた「ハイブリッド」のエンブレムが消える。ハイブリッドであることは特別なことではなくなるからだ。 その時、最も重要な技術は何かと言えば、意外だがエンジンの熱効率向上だ。ハイブリッドは減速時のエネルギーを回生することでエネルギー効率を上げている。モーターを駆動する電力は、そもそもエンジンで燃料のエネルギーを駆動力に変換し、走行中減速時にそれを回生しているわけだから、元を正せばエネルギーを作っているのはエンジンなのだ。だから車両全体のエネルギー効率を上げようと思えば、エンジンの熱効率改善こそがキーになるのは至極当然のことである。
トヨタでは、新型カムリの熱効率を最大で41%まで向上させた。これにハイブリッドシステムを組み合わせてエネルギー回生を行えば、最大値なら「50%」を超える数値を出せるだろう。ほんの少し前まで内燃機関の熱効率は「30%」と言われていた。ちなみに50%の熱効率なら石炭火力発電の熱効率を完全に超え、石油火力発電に迫る効率だ。敵わないのは液化天然ガス(LNG)火力と再生可能エネルギーだけ。 ついにそこまで来たかと思っていたら、限られた状況ではあるが、WEC(FIA世界耐久選手権)を戦うトヨタの「TS050」は回生込みなら、すでに55%に近づいており、今後の目標は60%に置いていると言う。もし本当に60%を達成するようになれば、火力発電所の効率を超えることになる。 常識で考えれば、再生可能エネルギーやLNG火力発電の運用でCO2を抑えたら、効率が最下位の石炭火力を減らすのが順当だ。石炭火力を放置したまま、より効率の高い内燃機関を減らそうとする意味が分からない。あるメーカーの人が「18%の金利の借金を放っておいて、先に9%金利の借金を返す人はいない」と言っていたがまさにその通りで、本当にCO2を減らしたいなら、高効率発電で得られた電力で徹底的に石炭火力を減らすことが早道だ。EV化で電力需要を増やして、その結果石炭火力の稼働率を上げるのはやることがあべこべだ。