日本のエンジンはまだまだ進化する 将来のクルマの電動化支える3つの技術
●マツダの新世代高効率エンジン「SKYACTIV-X」
さて、自動車エネルギーの「電気vs.石油」という戦いにおいて、カムリが記録した41%と言う数字も素晴らしいが、2017年には、もう1つ注目に値する技術が発表された。それはマツダの「SKYACTIV-X」だ。この技術の話をするには旧来のエンジンの問題点を説明しなくてはならない。 まずはガソリンエンジンだ。ガソリンエンジンは混合気にプラグで着火し、その火が燃焼室全体に燃え広がる仕組みだ。燃焼がリレー式に行われるので、途中に混合気の薄いエリアがあるとバトンが伝わらす、そこで消えてしまう。不完全燃焼を起こさないためには常に燃焼室全体を理論空燃比「14.7:1」に保たねばならず、燃料を薄くしてケチケチと燃やすことが難しい。さらに、気体には圧縮すると温度が上昇する特性があるため、圧縮比を上げようとすると燃料が温度依存でフライング着火してしまい、最悪エンジンを壊してしまう。だから圧縮比が上げられない。 ディーゼルエンジンはその点で有利だ、ディーゼルの特徴は、まず空気だけで圧縮するところにある。当然温度が上がるが、この時点では燃料を混ぜてないので燃える心配はない。心配がなければ圧縮比を高めることができる。そして空気が圧縮されて十分に温度が上がったところに燃料を噴霧する。その結果、混合気の燃え方はリレー方式ではなく、全員が一斉にスタートする同時多発型になる。料理でいう「フランベ」の様なものだ。温度を要因として燃料が燃えるので火炎のリレーは必要なく、空燃比が薄くてもちゃんと燃える。少量の燃料をガソリンエンジンより高圧縮比で安定して燃やせることが、ガソリンエンジンよりディーゼルが熱効率の良い大きな理由である。 しかし、こちらはこちらで別の問題がある。高温の空気に燃料を噴霧したら、燃料が空気に触れた途端に発火する。トータルで最適な空燃比でも、燃料噴射ノズルの側では燃料が濃くなり煤(すす)が出る。反対にノズルから遠い部分では、燃料もないのに高温になる。そうなると比較的安定している窒素がやむなく酸素と化合して窒素酸化物(NOx)になってしまう。要するに原理的に燃料と空気が混ざる時間が足りない。だからディーゼルは素養として煤とNOxの両面で排気ガスが汚くなる。