25年間ともにしたニッサンを離れ、スーパーGT監督として古巣TOM’Sへ……ミハエル・クルム「違うチャレンジがしたかった」
3月16日、岡山国際サーキットで始まった2024年のスーパーGT公式テスト。今年も笹原右京とジュリアーノ・アレジがコンビを組む37号車Deloitte TOM’S GR Supraのピットには、今回の公式テストからチーム監督に就任したミハエル・クルムが姿をみせた。 【1997年にペドロ・デ・ラ・ロサとともにJGTCチャンピオンを獲得したクルム】 すでに2月26日にTOM’Sから体制発表がされたとおり、クルムは25年間携わったニッサン／NMCとの契約が終了し、今季から37号車の監督として新たな挑戦を始める。現場に登場するのは、今回の公式テストからだという。 「自分の人生のなかで、他のチャレンジもしたいなという気持ちがあります。今53歳で、このタイミングでそういった違うことをしないと難しくなるかなと思いました」とクルム監督。 「具体的に話が進んだのは今年に入ってから。ニッサンとの契約が終了するので、舘（信秀）さんと話をしていたところ、急に話は進んでいって、このような形になりました（笑）」と、ここまでの経緯について語った。 これまでニッサンとの関わりが長かっただけに、ニュースが出た時には大きな話題となった。クルム監督も「ニスモ（NMC）と25年間一緒にやってきて、非常に素晴らしい時間を過ごすことができました。世界選手権も勝ったり、いろんなプロジェクトに携わらさせてもらいました」と、ニッサン／NMCとの思い出は多い様子だ。 「25年という長い繋がりがあって、ファンの皆さんも応援してくれてました。だから（離れる時は）寂しかったところはありますけど……みんながSNSで『クルムありがとう』『TOM’Sでも頑張って！』と言ってくれて、すごく嬉しかったですね」と笑顔を見せていた。 2023年までニッサン／NMCでは“アンバサダー”という役職で陣営全体を見ながら、アドバイスをしていく立場だったが、今年からは監督として1台のマシンに集中していくことになる。 「ニスモでは全体を見るという形でしたけど、それ以外にもKONDO RACINGでニュルブルクリンクとか、スーパーフォーミュラで監督の横についてアドバイザーという形で携わった経験はあります。でも、今回は1台を見て、そこに集中して勝負できるのは楽しみですし『レースをやっているな！』という気持ちになれます」とクルム監督。新鮮な気持ちで仕事に就いているという印象だった。 今年はTOM’Sの2台を統括する立場となる山田淳総監督は「1994年に彼が日本に来て、F3で一緒にやっていました。ちょうど、ここ（岡山）でクルムはF3のタイトルを決めました。昔から知っていたし、（クルムが）ニッサンにいた頃もよく話をしていました。僕にとってはぜんぜん違和感はないです」と語った。 「ドライビングアドバイザーとしても活躍しているので、彼が入ってくれることで、だいぶ良くなると思います。37号車は昨年ランキングが下の方だったので、今年はそうならないように、昨年よりも良い成績で毎レースを終えられるようにしていきたいです」と山田総監督はクルム監督へ期待を寄せていた。 ドライバーとしてTOM’Sに在籍していたころは、スーパーGTの前身であるJGTC全日本GT選手権で1997年のチャンピオンを獲得。JTCC全日本ツーリングカー選手権ではカーナンバー37をつけて戦っていたこともあるクルム監督。あれから四半世紀以上経ち、今度は監督として37号車の勝利を掴めるよう尽力することになる。 「とにかくステップバイステップで。去年より良い結果出したいですね」とクルム監督。 「僕はドライバーとしての経験があるから、（監督が）ドライバーの気持ちが分かるというのは大事だと思いますし、ドライバー側も『今何が起きているのか分かってくれている』と感じられるのは大きいと思います。僕の経験を活かしていきたいです」と語っていた。 クルム監督のもと、今季はどこまで上位に食い込むのか、Deloitte TOM'S GR Supraは注目の1台となりそうだ。 [オートスポーツweb 2024年03月17日]
