ゲリラ豪雨から身を守れ! みんな知らない「カミナリの基礎知識」
――冬にも雷が起こるんですか? 鴨川 はい。雷は地上の温度が高く、上空に冷たい空気がある温度差が激しいときに発生します。例えば、冬の北陸の海面水温は低くても5℃くらいでしょう。しかし、上空にはシベリアからものすごく冷たい寒気が入ってきます。マイナス何十℃の世界です。 海から湯気みたいな水蒸気が出ているのを見たことがあるでしょうか。それくらい海面水温と気温の差があるんです。すると、その水蒸気が積乱雲をつくり、雷が発生しやすくなる。 それに海は広いので大きな積乱雲ができやすい。それで「メガフラッシュ」と呼ばれる100㎞近い放電が起こることがあります。また、季節の変わり目にも温度差ができるため雷は発生しやすくなります。 ――いまさらですが、雷ってどうやって起こるのですか? 鴨川 積乱雲の中の上下の大気の温度差によって対流が起こります。この対流で雲の中の粒子が氷晶(小さな氷の粒)やひょう、あられなどサイズの違う氷ができます。 重力の関係で粒が大きなひょうやあられは下のほうに集まってマイナスの電気を帯び、粒の小さな氷晶は上のほうに集まってプラスの電気を帯びます。そして強い静電気をつくり、それが大量にたまって我慢できなくなって放電されるんです。 ■晴れていても落雷の危険はある! ――雷が起こったら、どうすればいいんですか? 鴨川 とにかく、屋外にいないことです。夏の雷だと落雷の前に雲放電(初期のゴロゴロ)がありますから、音が聞こえたらすぐに鉄筋コンクリートの建物の中に避難してください。鉄筋コンクリートの建物がなければ、木造の家屋でも構いませんが、危険度は少し増します。 たまに木造住宅に落雷することがありますが、テレビのアンテナ線や電力の配線を通ってコンセントなどが爆発することがあります。ですから、コンセントの近くにいるのは避けましょう。また、コンセントが爆発して火事になる場合もあるので、気をつけてください。 ――屋外にいた場合、雷は高い木に落ちやすいので、木から4m以上離れたほうがいいという話を聞いたことがありますが本当でしょうか。 鴨川 学術的な観点から言うと、実験をすれば確かに木に落ちます。ただし、実際の雷はもっと複雑で、必ず木に落ちるとは限りません。確率として木に落ちることが多いというだけです。 直撃雷を誘導する避雷針についても同じことがいえます。ビルに設置された避雷針にすべての雷が落ちているわけではなくて、よく見るとビルの角に落ちていたりするんです。 ですから、確率論ではなく安全の話をするのであれば、雷は高い木に必ず落ちるわけではないので、4m離れたからといって絶対に安全だとはいえません。 同じようにネットなどには「電線の下は電線が避雷針の役割をするので安全」といった記事もありますが、電線ではなく人間に落雷する可能性もあります。 今年も学校のグラウンドに落雷して生徒が病院に搬送されたというニュースがありましたが、グラウンドには金属でできたゴールポストや金網の柵などもあり、そっちのほうに落ちると思うじゃないですか。でも、実際には平坦なグラウンドに落ちています。ですから、雷はどこにでも落ちると思っていたほうがいいでしょう。