「吃音のハンデの克服には難関医学部に合格するしかない」吃音を持つ医師が“悩み続けた”半生を告白
“武器”となった専門医としてのスキル
――卒業後の2年間は「慶應義塾大学病院内科で研修を受けましたが、週に数コマの外来と検査の割り当て以外は、病棟患者をまわったり、文献を読んだり、上司とディスカッションしたりと、ある意味自由な過ごし方が可能でした」という。 北村:私は、超音波検査や気管支鏡、胃カメラ、大腸カメラなど、可能な限り、検査につかせていただいて経験を積み、研修2年目には、大学病院の当直とは別に、大学の関連病院3~4か所の当直を月に20~25回ほど勤務させていたただき、吃音のハンデを、とにかく、技術と経験で補おうと努力しました。内科と放射線科で研修、修練を積ませていただき、総合内科専門医・指導医、消化器内視鏡専門医・指導医、肝臓専門医・指導医、消化器病専門医・指導医、がん治療認定医、放射線診断専門医、核医学専門医、PET核医学認定医、肺がんCT検診認定医、脈管専門医など取得することができ、専門医のライセンスとたたき上げのスキルが私の武器となりました。 ――国家試験の10日前から就職活動をして、受け入れてくれた、内科と放射線科で研修を受けることになるが、ドクターとして働くにあたっても、吃音のハンディは付きまとった。 北村:ドクターになってから3年目の出張の時に、吃音が出ることについて、循環器科の部長に『この身体障害者が!』と言われた時はショックでした。4年目の出張の時には、患者さんの家族から 担当医師を変えて欲しいと言われることもありました。消化器内科の部長が配慮してくださり、部長がバックアップするということで担当継続となりました。そのご家族は、最終的には、すごく満足してくださいました。 勤務先によっては看護師や受付が診察室への呼び込みをするなど配慮がありました。 医者には、臨床と研究の2つの道があります。研究であれば、吃音が関係ないと思われるかも知れませんが、研究をすすめるにあたり、上司や同僚とディスカッションする必要は当然にありますし、研究成果を発表する学会発表もあります。大学からの研修先での病院で、症例報告を初めて口頭発表する際に、上司から緊張ほぐすためにお酒を飲んでから発表したらどうか、と提案されました。地域の病院いくつかが集まっての発表の場で、研究会レベルでしたので、冗談だったのかも知れませんが、私は、真に受けてしまい、発表前に、先輩が準備して渡してくださったウイスキーをストレートで何杯も飲みました。口頭発表時には千鳥足で、呂律も回らない状態となってしまい、発表途中で気を失い、退場となりました。その後、どうなったのか分かりませんが、付き添いの上司が何とかしてくださったようですが、翌日、こっぴどく叱られました。