そして3つ目のミスが原采配である。 　4－4で迎えた12回表、阪神の藤川に対して先頭の亀井が四球で歩くと、第2打席で本塁打を放っているセ・リーグ打率3位の坂本にベンチはバントのサインを送った。坂本は足を交差させたバントの構えから初球を見逃してストライクの判定。2球目はバントを行ったがファウルになった。そこでサインは強行に変わるが、こうなると追いこんだ藤川が有利。カウント1－2から140キロのストレートに三振した。 　この日、藤原オーナーと共にゲームを見守った阪神の掛布雅之SEAも「原監督はキャンプで“どのバッターに対してもタブーはない”と話していた。王道のスタイルで1点を取りにいったのだろう。ただバントで送っても、次は2本塁打の丸で歩かされたと思う。となると岡本、中島での勝負となる。原監督は、もちろんそれを承知でプレッシャーをかけて岡本勝負のつもりだったのかもしれないが、今の岡本と坂本の調子を考えると坂本に打たせてチャンスを広げて丸と勝負せざるをえない状況を作るべきだったのかもしれない。阪神の劇的なサヨナラ勝利につながるひとつのポイントだったね」と、この原采配を疑問視した。 　結果、丸が四球を選び、一死一、二塁とバントで送ったのと同じ状況にはなったが、岡本は藤川の球威に押し込まれてセンターフライ、中島も三球三振で、勝ちが消えたのである。 　ブルペンの不安定さは、巨人の課題だが、阪神に粘り強くつながれて12回に一死満塁の2度目のサヨナラピンチを背負った。11回の無死満塁の大ピンチを左腕・高木の快投でしのいだ巨人だったが、もうここを耐え切る“ブルペン力”は残っていなかった。 　8人目の左腕・池田が、阪神ベンチに残っていた“最後の野手”の高山に痛恨のサヨナラ満塁弾を浴びた。野球はミスを犯した方が負けるーーが鉄則だが、細かいミスがすべての“呼び水”になったのかもしれない。原監督は、甲子園が興奮の坩堝と化した歓喜のフィナーレをどんな気持ちでベンチから眺めていたのだろうか。