ビットコインマイニングへの包囲網を狭める米政府
調査のタイミング
しかし、なぜ今なのか? 直近のビットコイン価格の高騰が緊急調査の原因となったとしても、なぜ今回だけなのかという疑問が残る。 バイデン政権が二酸化炭素排出量の削減を優先していることは注目に値する。また、暗号資産に批判的な民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、連邦規制当局に対し、暗号資産マイナーに排出量とエネルギー使用量を開示させるよう求めている。 ビットコインマイニングは、4年ごとに起こる半減期に向けて、話題を集めるニュースになる可能性が高い。 短期的に効率の悪いマイニング機器が使えなくなる以上に、半減期がマイニングセクターにどのような影響を与えるかはまだ明らかではない。暗号資産の二酸化炭素排出量は今後数年で増加すると予想する人もいれば、減少すると見る人もいる。 さらにここ数カ月、ビットコインの環境コストについて、特にトップ2のネットワークであるイーサリアムが1回のアップグレードでエネルギー消費量を99%削減したことを受けて、世間で判断が分かれている。 グリーンピースのような一部の団体は、ビットコインがエネルギーを大量に消費するマイニングをやめるよう求めているが、一方で、ビットコインを環境へのメリットと見なし始めている団体もある。 例えば、ケンブリッジ大学は最近、ビットコインの年間エネルギー使用量の見積もりを下方修正し、MITやKPMGなどの機関は、ビットコインネットワークが電力網の「バランスを確保する」ことに役立ち、再生可能エネルギー開発に補助金を出し、経済のグリーン化に役立つとする報告書を発表した。
ビットコインのコストとベネフィット
マイニングはエネルギー集約的なプロセスだ。ビットコインが実行する暗号資産アルゴリズム「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」は、サーバーとのやりとりに数学のパズルを解くためのコンピューター処理という形でコストを加えることで、ネットワーク上のスパム、シビル攻撃、サービス拒否(DoS)攻撃を抑制する目的で設計された。 マイニングプロセスに反対する一部の人たちは、ビットコインマイニングを「無駄な」エネルギーと表現することが多いが、そうではない。そのエネルギーは、一種の証しとして意図的に費やされている。 ビットコインマイナーが競って「解決」する問題は、人類の知識体系に何かを加えるものでもなければ、Folding@home(タンパク質の解析を行う分散コンピューティングプロジェクト)のような生産的なものに貢献するものでもないという点では、何の意味も持たない。しかし、ネットワークの安全確保という点では価値がある。 そして、そこが厄介なところだ。つまり、ビットコインをどう評価するかだ。ビットコインの価値とは何か。標準的な回答は、市場がどのように評価しているかを見ることであり、当記事執筆時点では約4万2000ドル(約622万円、1ドル148円換算)となっている。 しかし、ビットコインの大きなエネルギー使用量をめぐる実際の議論のほとんどは、ビットコインの価格とはほとんど関係がない。むしろ、ビットコインのコストとベネフィットを中心に考えている。 EIAの調査が、そうしたコストとベネフィットをよりよく理解することに役立つと言えたらいいのだが。しかし、調査作成者たちは、ビットコインが一般大衆にリスクをもたらすかどうかという自分たちの質問にすでに答を出しており、それを裏付けるデータを探しているように思える。 |翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸|画像:米ワシントン州にあるビットコインマイニング施設(Eliza Gkritsi/CoinDesk)|原文:The U.S. Government Seems to Be Closing in on Bitcoin Mining
CoinDesk Japan 編集部