大カブ産地化へ試験栽培 「葉つきこかぶ」の青森県野辺地町 新たな収入源として期待
ゆうき青森農協野辺地営農センターは本年度、主に京都周辺で栽培され、京漬物の千枚漬けの材料に使われる大カブの試験栽培に青森県野辺地町内で取り組んでいる。同町周辺は冷涼な気候を生かし、「野辺地葉つきこかぶ」ブランドで知られる小カブ栽培が盛んだが、大カブの生産は初めて。今年は町内2軒の農家に生産してもらい、生育状況や課題を確認。今後は小カブ農家に広く声をかけ、大カブの生産を拡大していく方針だ。 同センターによると、大カブは北海道産の出荷が終わる10月中旬から、京都近郊の出荷が始まる11月上旬まで品薄になる。かつては10月中旬ごろでも京都近郊産の出荷量が多かったが、近年は猛暑の影響を受けているという。 昨年度、京都の漬物加工業者から市場を通じ、小カブ生産のノウハウがあるゆうき青森農協側に大カブ生産の打診があり、農協関係者と小カブ農家の3人が京都の市場や加工業者、大カブ農家を視察した。 同町周辺の小カブ生産は10月いっぱいまで。同月中旬から関東産が出回って値段も下がるという。このため、農協は新たな収入源として生産を検討。今年から試験栽培に乗り出した。 小カブの重さは平均200グラムほどで、種まきから収穫まで40~50日程度。大カブは重さが平均1.5キロで、収穫まで60~70日かかる。栽培方法はほぼ変わらないが、大カブは実を肥大化させるため追肥の必要があり、植え付けの間隔を広くしなければならないという。 試験栽培を依頼された農家の横田昌康さん(49)は同町向田の約5アールの畑で9月上旬に種をまき、11月26日から収穫を始めた。同日は朝から小玉スイカとほぼ同じ大きさのカブを掘り出し、葉を取って段ボール箱に詰めていった。 横田さんは「小カブ生産とほぼ同じ作業で、新たな設備投資も必要ない。『葉つき』だと葉のみずみずしさを保つため、真夜中から収穫する必要があるが、大カブは葉を落とすため、昼間に作業ができるのも大きなメリット。まだ試験栽培の段階だが、将来的な可能性を感じる」と語った。 もう1軒の農家は8月下旬に種をまき、11月上旬に収穫。7アールの畑から81ケース(1ケース10キロ)を出荷した。値段は「小カブに比べても悪くなかった」(同センター)という。一方で、肥料の与え過ぎにより、玉が割れる問題が生じた。 また、小カブ農家は高齢化が進んでいるため、重い大カブを収穫することの負担も課題だという。 同センター農産購買課の垣堺和三課長補佐は「大カブの生産は若手農家にとって有望だと思う。10月中旬以降の収入減を補う新たな取り組みとして、収入の安定化につなげていければ」と期待している。