“解像度の高い人”が「ハッ」とする意見を言える訳 ほかの人との違いは「抽象化思考力」
顧客:「今日は何か、面白い提案をお持ちいただいたそうですが……」 Aさん:「はい。御社の商品開発の在り方を一変させる提案になると自負しております。一言で申し上げれば、“ストーリー”を売る、ということです」 顧客:「ストーリー?」 Aさん:「はい。御社のユーザーはこれまで、御社の商品“だけ”をご覧になって購入を決められていたと思います。その結果、商品の単価や品質を競合他社と比較検討し、他社商品のほうが優れていればそちらを選ぶことも多かったのではないかと……」
顧客:「それはそうでしょうね。残念ながら、あらゆる点で競合に勝るという商品を作ることはなかなかできませんから」 Aさん:「ですから、商品“だけ”の魅力でなく、商品に付随する“ストーリー”に魅力を持たせることが重要なのです」 顧客:「なるほど……?」 Aさんは流暢なセールストークを続けますが、クライアントは何やら釈然としない様子です。 Aさん:「単品の商品それ自体を売ろう、買ってもらおうと考えるのではなく、その商品を買うことでどんな“ストーリー”が生まれるのか? ということに着目することがポイントです」
顧客:「……?」 Aさん:「その商品は、日常生活やビジネスのどんな場面で使われているのか? そこでは日々、どんな“ストーリー”が生まれているのか? それをイメージすることから、商品開発をスタートさせるわけです」 顧客:「? ? ?」 さて、このシーンを読んだあなたは、 「具体化思考が足りないだけなんじゃ?」 そう思ったでしょうか。しかし、実は少し違う問題なのです。軽快なセールストークからもわかるようにAさんはとても聡明な人で、おそらく「具体化はできている人」だと考えられます。
では、今回は何が問題かと言うと、「相手の『具体度(抽象度)』に合わせようとしていない」という点にあります。 人には立場や知識、状況に応じて、「抽象的な話のほうが理解しやすい人」と「具体的な話のほうが理解しやすい人」とがいます。 先ほどのAさんの話は、相手によってはむしろ理解しやすいかもしれません。例えば、企業の社長や役員など、比較的「大きな目」で物事を見ている立場の人の場合は、むしろ抽象的な話のほうが理解がしやすい。