「令和の象徴像」ルーツをたどる旅 天皇、皇后両陛下のご訪英振り返り
天皇、皇后両陛下の英国ご訪問は28日、滞在最終日を迎え、幕を閉じようとしている。日本の皇室、そして天皇陛下にとってゆかりの深い英国で国賓として過ごされた7日間は、代替わりから5年を迎えた令和の象徴像のルーツを確かめ、その輪郭を改めて描き出す機会となった。 【写真】バッキンガム宮殿での晩餐会を前に、記念撮影に応じられる天皇、皇后両陛下、チャールズ国王夫妻 訪問で最も注目されたのは、25日の公式晩餐会での陛下のお言葉だった。「苦難のときを経た後に(中略)天皇としてこの地を訪れた際の想いがいかばかりであったか」。陛下は、祖父であり、父である昭和天皇と上皇さまに、同じ天皇としての立場で思いを重ねることで、直接体験のない戦争の歴史を自らの言葉に落とし込まれた。 陛下は27日に英女王エリザベス2世の墓を訪れた際には、明治以降4代の天皇の名前が刻まれたガーター勲章のプレートを見学された。陛下も今回、同じ勲章を受けており、王室と皇室の長い歴史に、ご自身のお名前も刻まれていくことを、目に見える形でも実感されたのではないだろうか。 陛下とチャールズ国王の親密さ、尊敬と信頼に基づく絆の深さは、陛下の留学中から培われた兄弟のような関係性からだけでなく、国際社会への貢献という高い視座で共鳴した晩餐会のスピーチからもうかがえた。こうした唯一無二の関係性を、いかに次世代につないでいくかは課題だ。 昨年のインドネシアに続き、療養中の皇后さまが工夫を凝らしながら、親善訪問をまた一つ、着実に重ねられた意味合いも大きい。令和の両陛下らしい国際親善のあり方の模索は今後も続く。(オックスフォード 緒方優子)