バラムツ試食授業、何が悪かったのか
厚労省は「悪ふざけはやめて」
インターネット上でも賛否両論が巻き起こりました。学校側を批判するのは「やはり食べない方がいい」「こわい」という意見。一方で「何も問題ないのでは」「むしろ必要な教育だ」と擁護する意見も目立ちます。 大学の水産学部出身で、名古屋を拠点に多くの漁業の現場を取材する水産ジャーナリストの新美貴資さんは「専門家である教師が十分安全に配慮し、なおかつ生徒の同意の下なら、体験を重視する教育の一つだと言えるでしょう。授業の中身を十分に取材しているとは思えない、偏った内容の報道に違和感を覚えました。行き過ぎた管理が進む社会や教育現場の象徴で、教育の自主性が失われてしまう方が問題なのでは」と危機感を表します。 バラムツは日本近海にすむ深海魚で、体内の脂質のほとんどがワックスエステル、つまり蝋(ろう)。そのため人間が食べると胃で消化されず、大量に食べると激しい下痢症状を起こすとされます。しかし、その味は「大トロのようにおいしい」として、漁師や釣り人らは量を制限しながら食してきました。国は1970年、食品衛生法に基づき「食用禁止」の魚だとして全国に通達。現在は同法第6条の「有毒な若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いのあるもの」として「これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない」と定めています。 ただし、通達では「食用禁止」とうたいつつ、実際の内容は「販売禁止」。個人で、あるいは特定の少人数で食べることは否定されていません。そこで今回の専門学校のケースなどはグレーゾーンに入ってしまいます。 これについて厚生労働省水産安全係に聞くと、「条文自体は不特定多数への販売や流通を禁じており、飲食店で食べさせて食中毒が出た場合は営業停止などの処分が出ます。自分で食べる分にはそこまで強くは言えませんが、厚労省としては食べないでと呼び掛けています」として、以下のように釘を刺されました。 「今回の専門学校の件については名古屋市も調査したことなので個別の判断はしかねますが、擁護の延長で『ちょっとだけなら』とか、悪ふさげ的に食べることは絶対に避けてほしい」 バラムツを大量に食べて「悶絶した」「タオルを敷いて寝た」などの体験談は一種の武勇伝として出回っています。これらとは一線を画した上で、今回の授業を全否定で終わらせてもいけないと思いますが、いかがでしょうか。 (関口威人/Newzdrive)