人生で一度は食べておきたい。100年続く浅草の老舗町中華『あさひ』の「中華丼」
2時間ほど炊いたスープは、営業前に豚骨だけを引き上げ、その後もとろ火に掛けておくことで、鶏ガラからはさらなる旨味が出続けます。開店直後はあっさりとしたクリアな味わいのスープが、閉店間際には旨味が濃厚さを増していく……。その差は素人では気付けない程度ですが、常連の中には好みの味になる時間帯にだけ訪れるお客もいるそう。
新作メニューも人気
この店に立ち30年以上、祖父の味を愚直に守ってきた隆一さんですが、近年は新作料理にも精力的に挑んでいます。現在では店で一番の人気料理となっている「しょうがそば」は、そのきっかけとなった一品。 「北海道のおろしショウガをのせるご当地ラーメンをテレビで見て、興味半分で試してみたら、めちゃくちゃ美味かったんです。常連さんからも評判が良くて。基本さえブレなければ、新作も取り入れたいと思うようになりました」
その後も、タイ料理にハマって作った「パクパクパクチーそば」や、風邪気味の時に賄いで食べていたニンニクたっぷりの「スタミナそば」など、年に2回ほど登場する新作の中から、定番入りするメニューも増えているとのこと。 5年前からは息子の隆正さんが店に入り、親子並んで厨房に立っています。自身の代で店を閉めようと考えていた隆一さんも、いまは自分が受け継いだ味を残せることに幸せを感じていると言います。 老舗にとって最も重要なのは、毎日同じ味を提供すること。そのために、毎朝の仕込みから味見まで、祖父から学んだ流儀を寸分の狂いもなく繰り返す。一方で、お客に新たな楽しみを提案する、遊び心や柔軟性も必要。そのことを、創業100余年という月日が証明しています。 ●SHOP INFO あさひ 住:東京都台東区浅草3-33-6 TEL:03-3874-4511 営:11:30~15:00、17:00~21:00(20:30LO) 休:月曜 ※掲載情報は取材当時のものです
撮影◎辻 嵩裕 文◎佐藤由実