インパクト十分、頭が「アフロ」の仏像フィギュアが誕生した理由とは
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仏像が静かなブームという。なかでも「アフロ」の髪型をした仏様は、見た目のインパクトが十分に強い。奈良県内の寺院が所蔵する重要文化財指定の仏像「五劫思惟阿弥陀(ごこうしゆいあみだ)」は特にそうだ。この仏像を埼玉県のメーカーが10月からフィギュアとして売り出すという。しかし、なぜ“アフロ仏”なのか。
仏像フィギュアを美術品として楽しむ
「五劫思惟阿弥陀」の仏像フィギュアを販売するのは、埼玉県東松山市に本社を置く「MORITA」(森田滋社長)。もともと海外の木彫りの像などを扱う商社だったが、2007年から仏像フィギュアの製造販売を始めた。これまで阿修羅像や千手観音像などを取り扱っており、購買層は主に40~60代の男性で、女性客は約3割という。 東京都渋谷区にある直営店「イスム表参道店」に足を踏み入れると、あたかも美術館のようだった。ほどほどの間隔を置いて仏像フィギュアが並んでおり、そのなかに“アフロ仏”があった。髪の毛は、奈良の大仏など、ほかの仏像に比べると確かに盛られている。高さ11.5センチ、幅6.9センチ、奥行6.9センチ。重さは345グラムで、価格は1万3000円。
“アフロ仏”を目にした世田谷区の男性(55)は、「なかなか可愛くていいのではないでしょうか」と好意的だ。多い時は年間で約30万円もの金額を仏像フィギュアに投じた年もあるというほどのファンで「仏像を見ていると高揚しますし、自分の精神を浄化してくれもします。困った時に見つめていると頼りになる気がします」と話す。 「2009年ごろに仏像ブームが起こりましたが、ここ数年はブームが去ったというわけではなく、仏像フィギュアを美術品として楽しむ感覚が定着したように思えます」と話すのは同社のブランドマネージャー松川政輝さん。直営店のイスム表参道店や谷中店に加え、ウェブショップやそのほか全国の取扱店で販売するが、売上高は年々増加しているのだという。
なぜ“アフロ仏”がフィギュアに?
同社にとっての課題は、女性の購買層の拡大だ。女性受けしそうな仏像をフィギュアにしたいと社内の女性スタッフらの意見も参考にし、最終的に「五劫思惟阿弥陀」を選んだ。松川さんは「かわいらしい丸みをおびた造形がほかよりも抜きん出ていました」と説明し、ギフト需要も想定しているという。 同社の仏像フィギュアの制作は、3Dスキャナを使うわけではない。資料や写真を集めて設計する。仏像フィギュアづくりでは、鼻の高さが0.5mm違うだけで表情がまったく異なってくるという。苦労を重ねた。「仏像は表情が命です。切れ長の目やおちょぼ口などは特に苦労しましたが、思ったよりもかわいく仕上がりました。色が加わって命が吹き込まれました」と松川さんは満足げだ。