「理想の表明」「雅趣に富む」「少し意外」 新元号『令和』識者はどう見る
1日に発表された平成に代わる新元号「令和(れいわ)」。万葉集が典拠となり、初めて日本の古典から引用された。この新しい元号をどう見るか。皇室や年号に詳しい識者らに聞いた。 【中継録画】新元号は「令和」に 安倍首相が会見し談話発表
日本書紀ではなく万葉集「予想を超えた」
京都産業大学名誉教授の所功氏は「非常に良い文字、良い出典が選ばれた」と語る。出典が万葉集だったことは、日本書紀などの可能性が高いと思っていたことから「予想を超えていた」。 令和は、元号を選ぶための6つの要件を満たし、その中の「国民の理想を表すにふさわしいような意味を持つ」にも合致するという。 「『令』は命令の令ともいうが、法令の令でもあり、社会が上手く運んでいくために、秩序がきちんと立っているということ。その意味でそれが喜ばしいということ。『和』は言うまでもなく、和やかに、やわらかにと、まさに平和や和合を表せる文字」と説明。安倍首相が会見で「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」と語ったことを引き合いに「国民の理想を表す、これからも皆が明るく和やかに共存、協力していくことが求められる時代にふさわしい理想、希望の表明になる」との見方を示した。 令和の「和」は昭和の「和」と同じ字だが、これは「よくあること」だといい、江戸時代に「文化」の後に「文政」と同じ漢字を続けて用いた事例を挙げた。「面白いのは、今回を含めて20回目となる『和』と、幕末に同じ考案者が2回候補に挙げたことはあるが採用されていなかった『令』を組み合わせたこと。実は平成も、『平』という字は過去に何回も使われていたが、『成』は前回が初めて。昭和の『昭』もその時が初めてだった」と、よく用いられる漢字と新しい漢字をうまく組み合わせたと語った。 元号は中国が発祥だが、現在も残っているのは日本のみ。所氏は「西暦は広い地域に使われる文明、元号は漢字文化圏のみに使われる文化だと思う」と述べ、今後も西暦と元号の両方を大事に生かしていくべきだと語った。「中国、朝鮮半島もベトナムも王政、君主制がなくなった途端に元号が消えてしまった。日本は象徴天皇をいただく立憲君主国で、議会制民主主義というあり方だが、そういう中で元号が法律に基づいて生き残り、今回も改元できたのはいいこと。日本で現に生きて使われていることが大事」。