「邦画は全然ダメだ。僕らが8ミリで撮っている方が面白いんじゃないか?」黒沢清監督を動かした“不遜な思い”
学園闘争もの『SCHOOL DAYS』『しがらみ学園』
―― PFF(ぴあフィルムフェスティバル)が始まったのはもうちょっと後ですよね。 黒沢 そうです。その1年先。まだPFFとは呼んでませんでしたけど、ぴあフィルムフェスティバルが始まりつつあった頃ですね。 ―― 『しがらみ学園』が入選しました。 黒沢 それはもう少し後、僕が大学5年生で撮ったのがそれです。入選した時、僕は卒業していたんじゃないかな。 ―― 学園内でスパイものをやる感じでしたね。 黒沢 そうですね。あの頃はああいうものにはまってましたね。ほとんど大学の中だけで、ちょっとした、スパイものなのか、学園闘争ものとか当時呼んでましたけど、一種の学生運動のパロディみたいなものを。ジャン=リュック・ゴダールの影響が大きいと思うんですけれども、アメリカ映画の偽物みたいなものをあえてやる。途中で拳銃が出てきてパンパンと撃ったりする。しかもほとんどが立教大学の中というようなものを、楽しく撮っていた時期ですね。 ―― やっぱりゴダールを意識していたんですね。 黒沢 もちろんそうなんですけど、その前に『SCHOOL DAYS』というのを撮っているんです。それも学校の中でバカなことをやるという、スパイ映画めいたものなんです。もちろん蓮實さんの影響は強いんですけれども、『SCHOOL DAYS』を撮るに当たって直接的に影響を受けたのは、早稲田の映研の、年齢は一緒なのかな。学年は1個上の、長尾直樹監督(注1)が撮った『THE GREAT ADVENTURE OF PHOENIX』という1時間半ぐらいある大作なんです。僕はそれを早稲田の8ミリ映画祭で見て、ビックリして。その場で長尾さんに「これ、立教で上映してもいいですか?」と言って、実際立教で上映したぐらいなんですけど。第1回目のぴあフィルムフェスティバルの入選作です。長尾さんはそののち、東北新社に入ってCMを撮られつつ、何本か映画も撮りましたね。その後のお付き合いはないんですけど。その『THE GREAT ADVENTURE OF PHOENIX』が早稲田大学の中で妙な戦争映画、スパイ映画もどきのものをやっているもので、それに非常に強い影響を受けた記憶があります。
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